食品から摂取している葉酸は天然型葉酸と合成葉酸に大別でき、天然型葉酸の生体利用率は合成葉酸の50%と見積られているが、実際の生体利用率は食品によって30%から98%の幅がある。個々の食品中の天然型葉酸の生体利用率、およびその吸収に影響する食事因子については、適切な評価系がないために明確にはされていない。日本人の葉酸供給源として緑茶があるが、茶カテキンの葉酸定量や体内吸収への影響は明らかにされていない。また、葉酸は染色体の安定化に寄与することが報告されており、合成葉酸の放射線暴露による染色体損傷の防御作用を示唆した報告はあるが、天然型葉酸について検討した報告は見当たらない。 本研究では、食材中に含まれる天然型葉酸の生体利用率の評価系として、少量の食材試料で検討できるマウスのin vivo系を構築し、その妥当性を検証した。また、日本人の重要な葉酸供給源と考えられている緑茶に含まれている茶カテキンに関して、バイオアッセイによる葉酸定量への影響、マウスのin vivo系における葉酸の体内吸収への影響を評価した。さらに、マウスの小核試験を利用してホウレンソウ由来葉酸の放射線防御効果の可能性について検討した。 その結果、4週齢マウスに葉酸欠乏食を4週間与え、その後に葉酸添加食を1週間与えて、血漿、骨髄、肝臓の葉酸濃度および血漿ホモシステイン濃度の変化により、様々な食事葉酸の生体利用率を評価する実験系を構築した。その方法を利用して、日本人の主要な葉酸供給源と考えられる緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)がホウレンソウ由来葉酸の吸収にほとんど影響しないこと、またEGCGがバイオアッセイ法による葉酸定量に影響しないことを示した。また、マウスにX線を全身照射して骨髄染色体損傷を誘発する試験系において、ホウレンソウ由来葉酸が合成葉酸と同様、染色体損傷の抑制作用を有することを示した。
|