研究課題
超高齢者社会を迎えている我国では、加齢による筋萎縮の予防は高齢者のquality of life (QOL)向上と運動器症候群(ロコモティブシンドローム)発症予防に重要である。サルコペニア(老化による筋萎縮)は廃用性筋萎縮(宇宙フライトやベッドレストなど)と異なり、回復するのが困難であるとされている。申請者らは、筋特異的ユビキチンリガーゼが加齢による筋萎縮(サルコペニア)の重要な原因因子であることを見出した。さらに、我々はフラボノイド類の脱アセチル化活性や抗酸化作用が同調し、サルコペニア予防に効果的であるエビデンスを得た。本研究では、未だほとんど開拓されていない水産物資源(マリンフラボノイド)がサルコペニア予防に効果的であるかを検証することを目的とした。我々は褐藻抽出画分よりフラボノイドであるモリンを検出することができた。また、モリンは褐藻重量100グラム当たり10.4mgと高濃度で存在していた。そこで、大腿筋近傍皮下に癌細胞を移植することで液性因子による筋老化(筋萎縮)を模倣した(老化モデル)を用いて、モリンの筋萎縮抑制効果について検討した。老化モデルマウスの前脛骨筋において、萎縮筋で観察される筋重量の減少や筋線維面積の縮小が認められた。一方、0.1%モリン摂餌は、摂餌量や体重変化に影響しなかったが、筋重量や筋線維面積の減少に対して抵抗性を示した。以上の結果より、海藻中フラボノイドのひとつであるモリンは老化による筋萎縮の予防に効果があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
26年度予定の研究項目であったマリンフラボノイドを同定し、その効果についてのエビデンスを得た。26年度までの研究により、当初の予定通り、海藻中に含まれているフラボノイドもまた、筋萎縮予防に効果的であるという証明を達した。
マリンフラボノイドによるミトコンドリア由来酸化ストレス抑制機構の解析一般的に、フラボノイド類は抗酸化作用を示すことが知られている。特に、サルコペニアではミトコンドリア異常に酸化ストレスの細胞内蓄積が認められる。ミトコンドリア呼吸鎖蛋白質阻害剤を処理した筋管細胞(ミトコンドリア由来酸化ストレス過剰産生モデル)を用いて、マリンフラボノイドの抗酸化能を検討する。筋萎縮モデル動物に対するマリンフラボノイドの効果マリンフラボノイドの筋萎縮抑制作用を形態学的観察や分子生物学的手法を用いて前年同様詳細な検討を行う。
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