研究課題/領域番号 |
26350150
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
中塚 晴夫 宮城大学, 看護学部, 教授 (70164225)
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研究分担者 |
渡邊 孝男 東北文教大学, 人間科学部, 教授 (20004608)
千葉 啓子 岩手県立大学盛岡短期大学部, 生活科学科, 教授 (90197137)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヨウ素 / 幼稚園児 / 食事 / 陰膳 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は、幼稚園児のヨウ素摂取量を求めること、第二にヨウ素の記載を欠く食品が多い現在の食品成分表を用いヨウ素の摂取量を計算した場合、化学的分析による実測値とどの程度の差が生じ、また両者から、計算値を用いて実際の摂取量を推定する方法を検討することである。さらに対象を幼稚園児から青年壮年に至るまで広げることである。 計画に従って、研究開始前に既に終わっていた宮城県内幼稚園の園児の陰膳サンプルおよび食事の記録から、ヨウ素の摂取量を求めるためのデータベースを作成した。即ち食品成分表の標準番号と純使用量の一覧および対象者の性年齢体重等の諸要素のデータを確定し、データの性質に従って各表とし、また関連付けを行った。これとは別に、陰膳として採取したサンプルをICP-Massによる測定を行って実測値を得た。これらからヨウ素の摂取量を2通り得た。食品成分表による計算値と、実測値による値である。これは後者を基準の値と考えることで計算値を評価することとした。そこで、この2種類の値の相関を統計学的に求め、両者の関係を明らかにした。ここまでで第一の目的を達することができたと言えるので、この結果を論文とした。 次に、対象の年齢幅を広げるために、研究開始前にサンプル収集が終わっていた岩手県の成人のヨウ素摂取量を確定し、データベースを作成した。即ち食品成分表の標準番号と純使用量の一覧および対象者の性年齢体重等の諸要素のデータを確定した後、データの性質に従って各表とし、また関連付けを行った。さらに陰膳サンプルをICP-Massによる測定で実測値を得た。こうして、ヨウ素摂取量を2種類の方法で得たので、両者の相関を求め、一定の条件下では相関を得られが、その相関の係数等が上の幼稚園児とは異なるものとなった。またこの地域の例数を増やすために、対象者を募り、サンプルの採集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの段階で、計画通りの進行をしている理由としては、この研究が、研究費を認められた時点で開始したのではなく、それ以前の蓄積に多くを頼っていることである。すなわち陰膳の試料とデータは何年も採収を続けている。そのため、試料・データの利用のみならず、処理手技もこれまでと同様に行えばよく、研究法を新たに考案するために時間を要することはわずかだった。本研究で言えば、核心となる幼稚園児のヨウ素摂取量は、本研究開始の数年前に得た試料とデータを用いることができ、新たに加えた作業は比較的短時間で行えた。そこで、幼稚園児のヨウ素摂取量に関する作業は、最優先で行ったこともあり、初年度で報告を出すことができた。 一方、新たに陰膳の調査を行って試料・データを得る作業は、対象に選んだ地域が東日本大震災の被災地であったこともあり、かなり困難を伴い、年度末になったが、それでも地域住民の協力が得られ、予定通りの時間内に終了した。また成人女性の食事データがあるが、これの整理とデータベース化は難航しており、2年目に完成することには相当の努力が必要となる。また成人の試料については、データの収集が終わり、化学的分析結果が得られたこともあり、予定通り2年目に報告に至ることは可能であると考えられる。 以上のことから、本研究はほぼ予定通りの進行状況であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、まず成人(40歳以上)のヨウ素の摂取量を確定する。現在まで岩手県農村部および漁村部の陰膳の試料があり、データ(食品の使用量とその使用量)はほぼ確立している。昨年度に岩手県沿岸部の漁村で調査を行い、陰膳試料の追加を行ったが、これは、まだデータが確立していない。そこでこの追加資料のデータを、それ以前のデータと同様の形式にしてデータベースとして確立する。この作業は栄養士に依頼する。また化学的測定値については、一部得ているが予算の許す範囲で例数を増やす。前年度の結果では、化学的測定値と食品成分表による計算値の相関は、摂取量が最頻値程度の場合、相関が低いことが明らかになった。そこで、相関関係の確定には、例数を多く得ることが必須である。次に、この化学的測定値と計算値をまず確定(平均値、分布等)した後、計算値から実際の値の推測値を得る方法を検討する。次に、幼稚園児と、成人の両データベースにおいて、ヨウ素の摂取量を増加させる食品を確定する。ここまでの段階で、報告を執筆し、これで40歳以上の成人のヨウ素摂取量の報告および現在の食品成分表の問題等を明らかにする。 これ以外のデータとしては、宮城県の20代の女性の食事記録があり、このデータについて栄養価およびヨウ素摂取量を算出する。この場合には、実測値はないので、上の40歳以上成人の場合で得た、実測値(真の摂取量とみなす)と計算値の相関関係から、計算値から実際の摂取量の推定値を求める。 ここまでの計画で、研究2年目は時間的に一杯となるはずであるが、現在までの調査で持っている、韓国および中国の幼稚園児の試料およびデータがあり、これらの試料の分析および計算処理を行って、日本を含めて三箇国のヨウ素摂取量を確立し、計算値と実測値の相関を明らかにして、比較を行う。ここまでが研究終了までの計画の全体像である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一年度は、幼稚園児のヨウ素摂取量を報告することを第一の目標とした。これは急務と考えたので、既にデータベースがあった幼稚園児のデータのみを使用して集計処理し、新たなデータを得るための調査を行わなかった。そのため人手がかかるデータベースの作製は、次年度となった。また新たな化学分析を園児に関しては行わなかったし、大きな費用となりがちな人を対象とした調査とサンプル・データの収集も最小限とした。そのため、予算の使用が計画より少なく、コストがかかる作業が次年度以降に多く残された。
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次年度使用額の使用計画 |
上で述べたように、食事に関するデータベースを整備することが、次の段階の始めに行わなければならいものである。そこで、データベースすなわち現在までに入力された食品の種類と使用量の確認、新たな入力と確認を行うが、これを行うための人件費が必要であり、これを賄う一部として使用する。
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