研究課題/領域番号 |
26350152
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
稲山 貴代 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (50203211)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肢体不自由 / 食生活支援 / 食環境 / ヘルスコミュニケーション / ヘルスリテラシー / ヘルスプロモーション / 質的調査 / 障害 |
研究実績の概要 |
背景:健康づくりには個人的要因の他に、社会環境的要因が重要な役割を果たす。したがって、障がい者の健康づくりにおいては、外部要因である社会環境の質を評価し、有効なヘルスコミュニケーションを明らかにし、支援的な地域づくりの構築が極めて重要である。 目的:当事者の食生活の良好さや健康的な食行動に関連する周囲の人の支援的要因について質的に検討し、有効な関連要因、課題および解決策を明らかにすることが目的である。当事者が必要だと認識する食生活情報、その情報の選択や活用を明らかにし、支援的環境づくりに対するニーズや課題を整理する。 方法:スノーボールサンプリングにより、障害部位、職業の有無、受傷後年数や居住環境などが異なる東京近郊の在宅で生活をしている成人の脊髄損傷あるいは車椅子利用の方9名を対象とした(男性7名、女性2名)。インタビューは、H27年3月、あらかじめ準備したインタビューガイドにそって実施した。所要時間は1時間半である。インタビュー内容はICレコーダーに録音し、逐語録を作成、内容についてカテゴリー化などを行い分析している。なお、首都大学東京研究安全倫理委員会の審査・承認を経た後、調査を実施した。 結果:現在解析中ではあるが、現時点では、脊髄損傷や車椅子利用の方が必要だと認識する食生活に関する情報は、「脊髄損傷など当事者に特化した情報」として、褥瘡、骨粗鬆症、排泄などの健康・栄養状態に関する特有の情報へのニーズが高いこと、これらの健康問題に関連した食物摂取や食事のタイミング、エネルギー・栄養素必要量の情報が必要であること、また、仲間との学習会などを通した情報交換の有益性が高いことが示唆されている。これらの成果は、健康を保ち、QOLの高い食生活を送るためのガイド作成のための基礎資料ならびに地域における食環境、支援環境整備のための基礎資料となると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、グループインタビューによる当事者の「生の声」を収集することができている。現在、解析中の結果は、今年度、口頭発表、論文発表を予定している。また、グループインタビューをもとに、量的把握のための質問票を考案中である。 H26年度では、口頭発表1題、論文発表2報ができている(査読有り)。これらは、本年度の目的である“当事者の食生活の良好さと関連する周囲の人の支援的要因の解明”にさきだち、周囲の人の支援が食生活の良好さと関連することのエビデンスづくりが必要であったことから、H23-25年度「在宅の車椅子利用者の生活の質と健康を保つための栄養・食生活支援に関する研究」(基盤研究(C)課題番号:23500962)で実施した在宅脊髄損傷者の食生活の包括的評価のための調査データを用いて、本年度の研究目的のために二次解析を行った結果をまとめたものである。その結果、食物摂取の良好さには、食物へのアクセスや情報へのアクセスは関連せず、周囲からの支援有が関連すること、また食行動や準備要因の良好さには、周囲からの支援と社会参加の双方があることが最も望ましいが,社会参加がなくても周囲からの支援があることで良好な食生活につながることを明らかにした。 一方、本年度のグループインタビューでは、当事者を支援する周囲の人(家族や支援スタッフなど)の声を聞くことはできていない。この点に関しては、今後の課題となるものの、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では、当事者の食生活の良好さと関連する周囲の人の支援的要因について、量的に評価することを目的としている。26年度に実施したグループインタビューの解析結果から、量的把握が可能な質問票を開発する。肢体不自由に関する当事者団体の協力を得て、当事者と周囲の人を対象とした全国規模の質問紙調査を実施する。評価尺度/質問票の妥当性を検証し、有効な支援的要因について検討をすすめる。
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