研究課題/領域番号 |
26350154
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
栗木 清典 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (20543705)
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研究分担者 |
後藤 千穂 名古屋文理大学, 健康科学部, 准教授 (90367855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 内臓脂肪量 / 一次予防 / 緑茶 / 乳製品 / 腸内細菌叢 / Lactobacillales / Bifidobacterium |
研究実績の概要 |
内臓脂肪量を正確に計測するには専門の診療放射線技師による腹部X線CT検査が必要であるが、食生活の改善効果を評価するために、定期的に、放射線被爆を伴う高額な検査を複数回受けることはできない。そこで、まず、インピーダンス法(研究開始時:市販前)による内臓脂肪計(体脂肪計ではない)を用いて、健康寿命の高い静岡県民を対象に、メタボリックシンドロームの一次予防のため、内臓脂肪量、血圧、血液(血糖値や血清脂質の濃度)を四季にわたって測定した。その結果、静岡県の特産物である緑茶摂取では、季節にかかわらず、腹囲に有意な負の偏相関(年齢調整済み)がみられ(r= -0.25 to -0.29)、冬季と夏季で、BMI(r= -0.28 and -0.21)と内臓脂肪量(r= -0.23 and -0.24)に有意な負のh偏相関がみられた。さらに、MANOVAにより交絡要因で調整したところ、緑茶飲用の多い者で腹囲が低く、BMIでは低い傾向にあることを示唆した。 次に、次世代シークエンサーにより便試料中の腸内細菌叢を測定し、乳製品摂取との関連を検討したところ、男性では、Lactobacillalesの構成割合(%)で、BMI、体脂肪量、腹囲および内臓脂肪量(r= 0.32, 0.30, 0.33 and 0.34, in that order)、Streptococcusの構成割合(%)で、腹囲と内臓脂肪量(r= 0.30 and 0.31, respectively)に有意な正の偏相関がみられ、女性では、Bifidobacteriumの構成割合(%)で、BMIと体脂肪量(r= -0.39 and -0.41)に有意な負の偏相関がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四季食事調査の新たな参加者の協力が得られにくい中、内臓脂肪量の実測によるメタボリックシンドロームの一次予防について検討した結果、内臓脂肪量の減少に対する食生活改善として、簡便な保健・栄養指導として緑茶飲用を勧奨できることを示唆した。 腸内環境の測定は、当初の計画どおりterminal restriction fragment length polymorphism (TRFLP)で腸内細菌叢を測定し、疫学研究への適用について論文にまとめ英文の専門誌に投稿した。残念ながら、菌の属レベルの測定にとどまるTRFLPではなく、種レベルを測定する次世代シークエンサー(NGS)で検討すべきとの回答であったため、即座に試薬などを調達し、NGS機器による測定体制を整えて測定し直した。現在、NGSのデータで論文を書き直して再投稿しており、論文の掲載受理の審査が続いている。 本研究において、NGSの測定データがメタ解析(1000種以上の菌種)のデータとなったことから、食事や健診データとの関連は当初の想定よりも高度に検討することが可能となった。従来、内臓脂肪量やBMIに対する食事との関連を報告した論文が少ないだけに、今後、科学的に興味深い結果を数多く公表できると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、魚(エイコサペンタエン酸:EPAやドコサヘキサエン酸:DHAを含む)と大豆製品摂取に着目し、インピーダンス法による最新機器で計測した内臓脂肪量をはじめとする健診データや腸内細菌叢との関連について検討している。魚、EPAやDHA摂取量については、本研究代表者がこれまで検討してきた「魚摂取量のバイオマーカー」として赤血球膜中の脂肪酸(EPAやDHAを含む)濃度を測定し、多角的に検討する。小魚はカルシウム源として考えられているが、EPAやDHAの摂取源としても検討する。 和食を代表する食品の1つである大豆製品の摂取は、メタボリックシンドロームだけでなく、近年増加している前立腺や乳房のがんの一次予防に重要と考えられているが、大豆イソフラボンの腸内細菌によるエコールへの代謝について、疫学調査としては十分に検討されていない。そこで、大豆イソフラボンのうち、ダイゼインをエコールに代謝する腸内細菌の保菌者(遺伝子型)の割合を明らかにし、大豆製品摂取と健診データとの関連を検討する。なお、腸内細菌叢の遺伝子解析のみでなく、宿主であるヒトの遺伝子解析も試みる予定でいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度早々にデータ解析ができるように、昨年度末から赤血球膜中脂肪酸濃度を測定してきたが、測定検査会社の測定環境や測定条件の制限により、一部の血液試料が次年度(本年度)の測定となり、測定支払いとなった。その測定に要する金額が次年度(本年度)に繰り越されることとなったが、現在、この測定は順調に進んでおり、問題は生じていない。
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次年度使用額の使用計画 |
上記より、本研究の遂行に問題は生じておらず、本年度の予算執行に大きな変更なく、予定どおり、集積されたデータの整理に要する人件費、学会報告などの国内旅費、研究成果の論文投稿料としての支出する。
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備考 |
最終年度に本研究成果をホームページで公表するため、現在、研究代表者の所属する研究室のホームページをリニューアルしている。
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