研究課題/領域番号 |
26350154
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
栗木 清典 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (20543705)
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研究分担者 |
後藤 千穂 名古屋文理大学, 健康科学部, 准教授 (90367855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 内臓脂肪面積 / 前立腺や乳房のがん / 青魚・n-3系高度不飽和脂肪酸 / 大豆・イソフラボン / 腸内常在菌叢 / 季節変動 |
研究実績の概要 |
疫学研究では、メタボリックシンドロームの予防対策において、青魚に高含有のn-3系高度不飽和脂肪酸(n-3HUFA:EPAやDHAなど)による内臓脂肪量の減少の効果は明らかにされていない。本研究により、四季で一貫性はみられなかったものの、冬の重回帰分析で、 赤血球膜(RBC)のn-3HUFA濃度は有意な内臓脂肪面積の減少に、 RBC_飽和脂肪酸(SFA)濃度は有意な増加に関連していることを明らかにした。よって、内臓脂肪面積を減らすためには、冬にRBC中のn-3HUFAとSFAの濃度を増加ならびに減少させることが効果的と推察された。 次に、前立腺や乳房のがんの一次予防に役立てるため、大豆イソフラボンであるダイゼインをエコールに代謝する腸内細菌について検討した。文献検索システムによるシステマティックレビューによりエコールへの代謝産生菌を定義し、四季毎に、本研究対象者の保菌率と、その季節変動を明らかにした。なお、各種の腸内常在菌の保菌者と非保菌者には大豆製品の摂取量に違いはみられなかった。つまり、エコールへの代謝産生菌の有無と大豆製品の摂取量に関連はないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、内臓脂肪面積の減少に対し、質問票調査による緑茶飲用は簡便な保健指導として勧奨できることを示唆し、平成27年度、冬に青魚のn-3HUFAを高摂取することが効果的と期待される結果を得た。前立腺や乳房のがん予防を目指し、大豆製品等の摂取と腸内常在菌叢(HGM)との関連についても知見を得た。以上より、本研究は、概ね順調に進展しているといえる。 具体的には、従来、赤血球膜を構成する脂肪酸濃度の解析は、個々の脂肪酸や、SFA、n-3HUFAなどの特性別にまとめた解析であったが、主成分分析により、冬に、成分PC_l(正にRBC-n-3HUFA濃度、負にRBC_SFA濃度を説明する成分)で有意に内臓脂肪面積と負に関連しており、新しい視点で再現性のある結果を得た。現在、英文の専門誌への投稿を準備している。 HGMの測定は、菌の属レベルにとどまる当初計画案のTRFLP法に加え、菌の種レベルも検討できる次世代シークエンサー(NGS)による測定の機会を得たことから実施した。食事要因との関連を検討する前に、報告例の少ない測定精度について英文専門誌に公表した。 秤量法食事データからの食品・栄養素摂取量の算定は全国研究における標準化の方法を導入し、当初案より遅れて完了した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、質問票および秤量法による2つの食品・栄養素摂取量のデータセットから、属と種の腸内常在菌叢(HGM)との関連を明確にするなど、新たな作業仮説の検討を開始した。初年度の内臓脂肪面積の減少に対する緑茶飲用の効果をさらに詳細に検討するため、平成28年度年度は、健康長寿日本一の静岡県民のお茶の飲用習慣に着目し、体重、内臓脂肪面積、筋肉量との相互関連について検討する。 なお、宿主であるヒトの遺伝子解析について、食品・栄養素摂取量、血清LDL-C濃度とその関連遺伝子との相互関連を、高効率に、かつ、網羅的に、季節変動を含めて検討する。 少しずつではるが、新たな知見が集積されつつあることから、生活習慣病の予防に役立てるため、これらのデータまとめた内容を社会に公表するためのホームページを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検査会社による血清や血漿の脂肪酸分画の測定は高額の項目で、血清や血漿などの血液の液体成分を検体試料としている。赤血球を検体試料とした場合、白色の膜にする非常に手間を要する工程が必要のため、測定価格はいっそう高額になる。本研究では、中長期の青魚、EPA・DHA摂取量のバイオマーカーである赤血球膜中のEPA・DHAなどの脂肪酸の測定データで今後の解析を進めたいと考え、臨床検査会社との交渉の末、その非常に手間を要する面倒な工程を自身で行うことで、測定費用を抑制えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、研究成果を報告する学会報告のための国内旅費、および、研究成果の論文投稿料の増額を予定している。
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備考 |
文部科学省科学研究費 新学術領域研究「生命科学系3分野支援活動」の助成による日本多施設共同コーホート(J-MICC)研究との関連、および、本研究の紹介
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