研究課題/領域番号 |
26350162
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
藤倉 純子 女子栄養大学, 栄養学部, 准教授 (20307078)
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研究分担者 |
武藤 志真子 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (40076162)
吉本 優子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (40255914)
池田 裕美 日本大学短期大学部, 食物栄養学科, 准教授 (20442121)
神戸 絹代 日本大学短期大学部, 食物栄養学科, 教授 (70369453)
中山 洋 東京電機大学, 理工学部, 教授 (10287435)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食教育 / ICT / 遠隔交流 / 高校生 / 栄養 / 生活習慣病 / 体組成 / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
高校生に対するICTを活用した遠隔交流による「生涯にわたる生活習慣病の予防」を目指した食教育を3年間継続し,その効果を検討する。Si県の私立N高校とSa県内私立U高校の2校を対象とし,クラス単位で介入群と対照群を設け準実験デザインとした。 1年目のテーマは「量の概念の獲得」とし,「自分に必要な1日のエネルギー量と主食の適量を把握する」とした。7月事前調査(体組成測定,事前質問紙,食物摂取頻度調査,フードマッピング),10月3校遠隔講義(E大学-N校-U校をSkypeにより接続),11月KJ法によるグループワーク,12月遠隔交流授業,3月事後調査を行った。 事前調査では,男子には適正な穀類・菓子類及び脂質の摂取量の理解を促すことが必要と思われた。女子は食に対する認識がネガティブな傾向が見られた。遠隔講義では,「自分の身体を知る,測定結果の見方」をテーマとした。男子の方が,自分の体型・体組成が適正と認識していた。グループワークは,「人生ゲームタイトル」と「キャッチコピー」を考える課題とし,KJ法でアイディアを出し合い,タブレットを用いて提出した。両校共8割以上が自発的な発言,将来の健康について考えられたと回答した。交流授業に期待や意欲が高い者は,楽しかった,相手校と一緒に授業を受けているように感じたと回答した。 体重とネルギー摂取の知識は介入群において事後に有意に上昇した。食育介入は知識の獲得に効果があった。女子は「リズム(不規則,間食,夜食)」の食行動が問題で,「やせ願望」,「ストレス」,「食生活の自己管理の自信」との関連が大きい。また男子は,「食べ方(早食い,ながら食べ,偏食など)」の食行動が問題で,「自尊感情」との関連がみられた。 来年以降は,女子は間食や夜食に関する食育が必要で,男子はプライドを尊重しながら,早食いやスマホでゲームをしながらの食べ方についての食育が欠かせない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高校生を対象とし,「生涯にわたる適正体重の維持,生活習慣病の予防」を目指した食育を3年間実践し,その効果を検証することを目的とする。 各校での学習環境,学事計画,時間割,通信ネットワークの確認・接続実験を行った。 事前調査,遠隔講義,食教育授業(グループワーク),遠隔交流授業,事後調査の5フェーズとした。事前調査は7月に健康・食や体型に関する質問紙調査,食物摂取頻度調査(FFQg),フードマッピング,体組成測定を行った。遠隔講義は10月に介入群・対照群とも栄養大,N校,U校の3地点をSkypeグループ通話機能により接続した。栄養大の生理学博士が,体組成測定結果票の見方について説明した後,質疑応答を行った。食教育授業は11月に各校にて介入群を対象に実施した。フードマッピング結果を生徒に配布し,食知識と食行動のズレを確認した。また,KJ法にて「体重の旅・人生ゲーム」の案についてグループディスカッションを行った。内容は,7つの年代ごとに,自分の生活状況,健康,体重,幸せ指数等をまとめ,タブレットで模造紙の撮影をした。また,人生ゲームのキャッチコピーとタイトルを班ごとに決め,KeyNoteにて入力し,提出はDropBoxとした。遠隔交流授業は12月にN校,U校をSkypeにて接続し,代表生徒がカメラの前に立ち,BMIの計算方法,ご飯の計量,エネルギー量について学習した。主食の量に関するクイズを出題し,PCやタブレットにてClica(クリッカー)で回答させた。事後調査は3月に介入群,対照群とも実施した。基礎データや学びの過程で生み出された学習物は各自 ポケット式クリアケースを用意し,ポートフォリオに収集した。次年度以降活用できるように,eポートフォリオは設計途中である。 遠隔交流時の通信トラブルやグループワーク時の授業方法など問題点が見られたが,当初の計画どおり5フェーズを実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も授業計画は、事前調査,遠隔講義・食教育授業,食教育授業(グループワーク),遠隔交流授業,事後調査の5フェーズを計画している。2年目のテーマは,「エネルギー・糖質・脂肪・塩分摂取と間食・夜食の摂り方」とし,引き続き「体重の旅・人生ゲーム」の原案をグループワークで話し合い,ゲーム作成を行う。 2年生進級時に、一部、クラス替で生徒の異動がある為、グループワーク時の班編成の変更を行う必要がある。 1年目で発生した遠隔交流時の通信トラブルや,映像の見え方,音声などの問題を改善する。テレビ会議にはSkypeの他,VSee,FaceTimeの活用を試みる。遠隔講義時には,講義中の資料を別スクリーンやタブレットに表示し,小冊子・ワークシートと連動するように工夫したい。両校で,介入群の人数が異なる為,グループワーク時の授業内容を生徒が集中できるように工夫し,グループサポートメンバーの事前打合せや,人数を調整する。また,グループワーク可能でかつタブレット端末が利用可能な教室の確保を各高校側に事前依頼し,接続実験を行う。また,高校の授業時間50分に合わせた授業案を作成する。各校で実施する2回のグループワークでは,参加する生徒としない生徒の差が大きかったので,ワークショップのような授業やグループメンバーの個々人に役割分担を明確にし,最後にグループ発表をするような授業形態にし,タイムキーパーを配置し,時間配分を考慮したい。また,対面授業(グループワーク)と遠隔交流授業との学習活動の特徴による授業の切り分けを行い,遠隔交流学習内容は遠隔の利点を生かしたような内容に絞り実施する。 遠隔交流授業では,2校に分かれる為,限られた人数の研究メンバーやサポーターと協力し,役割分担を明確にし,事前の接続実験,リハーサルを実施する。 事前・事後調査データは速やかに整理・集計・解析を行い,国内外で学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者の武藤が,Si県のN校側に行く機会が当初の予定より回数が減った為,予想していたほど交通費がかからなかった。また当初,統計解析ソフトを購入予定だったが,当該予算の使用用途を変更することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
使用用途を統計解析ソフトから,eポートフォリオ開発費に変更する。タブレット端末でも閲覧可能なWeb形式にし,生徒のIDとパスワードから,身体測定データの時系列データのグラフ化や,食事記録,学習活動で作成したワークシート等を閲覧できる仕様とする。また,交流授業の際,市販食品等を選択し,栄養価等を確認できる機能も付け,実践時に活用する予定である。
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