研究課題/領域番号 |
26350170
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研究機関 | 九州栄養福祉大学 |
研究代表者 |
喜多 大三 九州栄養福祉大学, 食物栄養学部, 教授 (50153086)
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研究分担者 |
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 教授 (80140896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自律神経バランス / テアニン / 計算負荷 / ストレス / カテーコールアミン / 緑茶 / 松節抽出物 / ウエアラブルバイオセンサ |
研究実績の概要 |
喜多らは平成27年度に低強度の精神負荷とされる内田クレぺリン(U-K)テストによる計算負荷条件を健常女性成人で検討し、交感神経優位な自律神経バランスの変動を認めた。さらに平成28年度まで、このU-Kテストによる自律神経バランスの変動に対する緑茶に豊富な遊離アミノ酸であるテアニンの摂取による影響を検討した。その結果、テアニン前摂取によりU-Kテストの交感神経興奮状況は観察されず、一方、副交感神経のパラメーターの興奮性が有意に高まっていた。以上の結果より、テアニン前摂取では、U-Kテストによる交感神経優位な自律神経バランス変動を認められず、さらに副交感神経活性の増加効果をもたらす抗ストレス効果の可能性を示唆した。これらの結果は、「第69回日本薬理学会西南部会(松山、2016年11月)」および「第90回日本薬理学会年会(長崎、2017年3月)シンポジウム14 病態生理学および薬理学研究における自律神経バランスの新しい評価システム」において発表した。 他方、研究分担者の柳原らは、自律神経バランスにおける更年期障害用の自動測定・解析アプリケーションソフト、疲労度蓄積チェック及び職業性ストレスチェック用ソフトを開発した。現在、薬局店舗、大学や病院診療科の各研究機関で自律神経バランスの測定を実施している。これらの内容については「第90回日本薬理学会年会(長崎、2017年3月)シンポジウム14」において発表した。また、柳原らは交感神経実験系である副腎髄質細胞において、松節抽出物(pine nodules)の成分の1つSJ-2がストレス誘導によるニコチン性アセチルコリン受容体の機能を抑制して、CA分泌及び生合成を抑制する研究結果を第90回日本薬理学会年会(長崎、2017年3月)及び論文(J. Pharmacol. Sci.,133:268-275、2017)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に低強度の精神負荷とされる内田クレぺリン(U-K)テストによる計算負荷条件を健常女性成人ボランティアで検討し、交感神経優位な自律神経バランスの変動を認めた。さらに平成27年度および平成28年度は、このU-Kテストによる自律神経バランスの変動に対する緑茶に豊富な遊離アミノ酸であるテアニン前摂取による影響を検討した。その結果、テアニン前摂取によりU-Kテストの交感神経興奮状況は観察されず、一方、副交感神経のパラメーターの興奮性が有意に高まっていた。以上の結果より、テアニン前摂取では、U-Kテストによる交感神経優位な自律神経バランスの変動を認められず、さらに副交感神経活性の増加効果をもたらす抗ストレス効果の可能性を示唆した。一方、ストレスマーカーの一つである唾液アミラーゼ活性については、平成27年度および平成28年度においてもU-Kテストによる計算ストレス負荷後のアミラーゼ活性を測定したが、個人差が大きく一定の方向性を認められなかった。本年度は、ストレスの種類、唾液アミラーゼ活性やその他のストレスマーカーの活性について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究課題の最終年度となる。今までに健常成人女性ボランティアにおいて、低強度の精神負荷であるU-Kテストによる計算負荷前後に、自律神経バランス測定を行い、解析データを標準の交感・副交感神経パラメーターの各々3つの成分を6つに分けた六角形のレーダーチャート上に重ね合わせることにより、交感神経優位な自律神経バランスの変動を認めた。 次に、このU-Kテストによる自律神経バランスの変動に対する緑茶に豊富な遊離アミノ酸であるテアニン前摂取の効果を調査した。その結果、健常女性ボランティアへのテアニン前摂取では交感神経優位な自律神経バランスの変動は観察されず、副交感神経優位な自律神経バランスの変動を認めた。以上より、テアニン前摂取は、副交感神経優位な自律神経バランスをもたらす抗ストレス効果の可能性を示唆した。最終年度は、上記のストレス負荷による自律神経バランスの変動とストレスマーカーの測定およびその関連を解析し、今までの実験結果も含めた学会発表および論文作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度および平成28年度においてもU-Kテストによる計算ストレス負荷後のアミラーゼ活性を測定したが、個人差が大きく一定の方向性を認められなかった。そのため、研究全体の進行が遅れ、予定していた実験や論文作成が達成できず、測定試薬等の次年度使用額が生じた。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、U-Kテストによる計算負荷後の自律神経バランス変動と唾液アミラーゼ活性やその他のストレスマーカーの活性との関連を解析し、今までの実験結果を含めた学会発表および論文作成を行う。
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