研究課題/領域番号 |
26350171
|
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
榊原 隆三 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (30127229)
|
研究分担者 |
深澤 昌史 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (20238439)
野嶽 勇一 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (30332282)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 乳酸菌 / 発酵 / バイオジェニックス / 食品 / 毛髪 / 発毛 |
研究実績の概要 |
毛髪は、毛周期と呼ばれる成長期・退行期・休止期の3ステージを繰り返す毛の再生機構により、一定の量を保っている。薄毛症状は、毛髪の量の減少やミニチュア化などに基づき現れる。壮年性脱毛症における所見としては、毛周期における①休止期から成長期への移行の遅延(発毛抑制)、②成長期から退行期への移行期間の短縮(脱毛促進)等が挙げられ、これらの異常に基づいて総合的に薄毛症状が顕在化すると考えられる。従って、薄毛症状を改善させるための作用点としては、「休止期の短縮すなわち成長期への移行促進(発毛促進)」及び「成長期の維持・延長(脱毛抑制)」の2点が考えられ、これらの作用点に改善が図られた場合に発毛の促進が見られるようになる。本研究では、豆乳の乳酸菌発酵ろ液PS-B1が薄毛症状の改善に及ぼす影響について、発毛促進および脱毛抑制の2つの観点から検討することを計画しているが、平成26年度は発毛促進に及ぼす影響について調べた。 成長期に入る時期(4週齢)のC57BL/6雄性マウスの背毛を除去した後、これらのマウスを(1) 5% 豆乳、(2) 3% PS-B1、(3) 5% PS-B1、の各試料混合飼料摂取群及び(1)~(3)の濃度になるように20% EtOHに溶解した各試料(50 μL)を背部に1回/日塗布した塗布群に分けた(n=3)。各群に決められた食餌摂取及び塗布を14週間行いマウスの背部の状態を画像として記録した。それぞれの群の対照群(通常飼料摂取群及び20% EtOH塗布群)の画像と比較し、PS-B1の摂取及び塗布が発毛に及ぼす影響を評価した。その結果、PS-B1の摂取及び塗布により、それぞれの対照群と比べ退行期・休止期が1週間程度短縮される傾向が見出され、PS-B1が発毛促進効果を有することが強く示唆された。一方、脱毛抑制作用については、明確な結果を得られなかったので再度検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、薄毛モデルマウスに対するPS-B1の摂食・塗布実験および皮膚等の回収試料を用いて機能解析実験を行い、発毛促進・脱毛抑制に及ぼすPS-B1の影響とその作用点を詳細に解析することを第一の目的としている。最終的には、PS-B1に含まれる薄毛改善作用を示す生理活性物質の単離・同定を目指すだけでなく、ヒトを対象とした臨床試験を実施することによって、PS-B1の塗布や食生活への導入を活用した、これまでに無い新しいタイプの「簡便・安価な毛髪ケア法」の提唱を図ることを目標に定めている。 平成26年度の研究では、まず、薄毛モデルマウスとしてC57BL/6雄性マウスを用いることとし、本マウスの毛周期を明らかにするとともに、PS-B1塗布及び摂食が毛周期にどのような影響を与えるかについて調べた。通常、マウスの毛周期は、専用のバリカンで背毛を一様に除去した後、背部の色調及び背毛の生育状態を観察することにより知ることができる。成長期には除毛した部分の皮膚はメラニン色素合成が盛んで黒色であるが、退行期には灰色、休止期にはピンク色に変化する。これを指標にC57BL/6雄性マウスの毛周期を14週間にわたり詳細に調べたところ、第2毛周期の成長期開始が生後4週目、退行期開始が6週目、休止期開始が7週目、さらに第3毛周期開始が12週目であることが明らかとなった。そこで、この毛周期に対して、PS-B1の摂取及び塗布の影響を調べる実験を行い研究概要の項に述べた結果を得た。 以上、平成26年度の研究から、PS-B1には薄毛モデルマウスの薄毛状態を改善する物質が含まれていることを強く示唆する結果を得た。本年度の成果は、本研究全体計画の中では約25%程度の達成度と考えているが、本年度得た結果は本研究の基盤となる重要なデータであり、今後の研究の速やかな遂行に結び付くと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究から、背毛を除去した薄毛モデルマウスに対して、一定期間PS-B1を摂取させた場合または塗布した場合、いずれの場合も対照群との発毛状態の比較から、PS-B1に「発毛促進作用」があることが強く示唆された。今後この点を明確にするため、個体数を増やして詳細に解析するとともに、PS-B1の作用点を明らかにするために、モデルマウス背部の皮膚組織の免疫組織化学的実験、及び定量PCRを駆使した分子生物学的実験を実施する。これらの実験では、毛髪関連因子であるVEGF、FGF-7、IGF-1などをターゲットとし、遺伝子及びタンパク質レベルの両面から、PS-B1の影響による変動を解析し、PS-B1の作用機構の一面を明らかにする。 上記の研究に加えて、次の三つの研究を推進する予定である。①PS-B1の発毛・脱毛への影響を細胞レベル及び分子レベルで解析するため、ヒトの毛包組織から採取して株化された毛乳頭細胞に対するPS-B1の作用実験を行う。②PS-B1に含まれる多様な成分の中から、薄毛改善作用の本質となる物質を単離・同定する。③薄毛の症状を呈する被験者に対して、一定期間のPS-B1を塗布する場合と、食生活に取り入れて摂取する場合に分け、その効果を経時的に検証する臨床試験を行う。
|