研究実績の概要 |
デンプンの湿熱処理とは、デンプンを低水分条件下で飽和水蒸気によって加熱する方法で、これまで玄米に湿熱処理をすると、食物繊維や難消化性デンプン含量の増加、消化管通過時間の短縮、糖代謝や脂質代謝に影響することを確認してきた。これらの現象は、糊粉層中の難消化性成分増加によるものか、胚乳部デンプンの消化速度が低下しグルコース吸収速度が低下することによるものかが明らかでない。そこで今回、湿熱処理が玄米のデンプンに与える影響を調べるため、「コシヒカリ」(KH)の未処理玄米と高アミロース米品種「越のかおり」の未処理玄米(KK)、KH,KKに対し0.3 MPa、10分間の湿熱処理をした玄米(HMTKH,HMTKK)を各々精米した白米を調製した。ラードを10%付加した高脂肪AIN-76配合飼料のコーンスターチを各白米試料48.5%で置換した飼料により、5週齢のWistar系雄ラットを35日間自由摂取で飼育した。KHとKKの比較からアミロース含量の影響、KH,KKとHMTKH,HMTKKの比較から湿熱処理の影響を評価することができる。機能成分として考えられる難消化性デンプンは、アミロース含量の多いKKの方がKHより高く、湿熱処理によってKKよりHMTKKが高くなった。アミロース含量と湿熱処理の有無によるラットの成長等には差がなかったが、湿熱処理によって14日目の空腹時血糖値が低下傾向を示し、解糖系のグルコキナーゼとピルビン酸キナーゼ活性は、HMTKH,HMTKKの方がKH,KKより高かった。血中トリグリセリド、脂肪酸合成系のアセチルCoAカルボキシラーゼと脂肪酸合成酵素活性は、アミロース含量の異なるKHとKK間には差がなかったが、湿熱処理によって低下する傾向が見られた。
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