研究実績の概要 |
前年度は自然薯ムカゴを高脂肪餌への混餌によってC57BL/6Jマウスに投与した。8週間飼育後、DNAマイクロアレイ(GeneChip Mouse Genome 230 2.0 Array, Affymetrix)を用いて、肝臓の遺伝子発現解析を実施した。得られた変動遺伝子の中から高脂肪の影響を改善したもの(改善変動遺伝子)、高脂肪の影響は受けないがムカゴの効果がみられるもの(特異的変動遺伝子)を抽出した。GOTermによる機能分類を行ったところ、改善変動遺伝子は応答や代謝に関わるものが多く、特に脂肪酸代謝、有機物に対する応答、細胞の酸化還元ホメオスタシスなどであった。特異的変動遺伝子は免疫関係の抗原プロセシングと呈示、代謝関連のカルボン酸代謝、細胞構成関連のコラーゲン繊維構成であった。高脂肪の影響を改善した遺伝子群について、Ingenuity Pathway Analysis (Qiagen)を用いて上流因子解析を行い、zスコアの絶対値が2.5以上の因子を抽出した。その結果、折り畳み不全たんぱく質応答に関連する因子であるtunicamycin, XBP1, Ern1が抑制方向に制御されていると推測された。これらのことから、8週間の高脂肪ムカゴ摂取は高脂肪のみの摂取よりも折り畳み不全たんぱく質が少ないと考えられた。また、特異的変動遺伝子の上流因子からは細胞増殖が低下し、脂質代謝が亢進すると考えられた。また、より短い期間高脂肪ムカゴ餌を投与した際の肝臓の遺伝子発現を調べた。摂取4週目肝臓の改善変動遺伝子も脂質代謝関連が多く存在した。以上の結果から、高脂肪負荷時における自然薯ムカゴの摂取は脂質代謝の乱れを軽減するように機能すると推測された。また、長期に及ぶ脂質負荷によるERストレスの改善にも寄与すると考えらえた。
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