研究実績の概要 |
食後高血糖や血糖変動が酸化ストレスを増大させ,動脈硬化を促進させることが我々の研究を含め多くの報告がある.また,糖尿病患者の血中の終末糖化産物(AGEs)が糖尿病合併症リスクを増大させることが注目されている,しかし,食品に含まれるAGEsが糖尿病患者にどのような影響を与えるかについては未知数である.本年度は,肥満女性におけるAGEsと食事の要因について検討を行った.対象は女性25名(50±8歳,28.7±3.4kg/m2)の肥満者で,除外基準は空腹時血糖値110mg/dL以上,喫煙者,多量飲酒者などである.ベースラインと2か月後に,身体計測(体重,BMI,ウエスト周囲径,血圧等),血液検査(HbA1c,血清脂質,肝機能等),血中AGEs(分光蛍光分析法),食事調査(秤量法で3日間の食事記録)を行った.介入2か月後の血中AGEsの変化量と検査値の変化量について,体重,BMI,空腹時血糖値,LDL-Cは減少していたが相関はなく,ウエスト周囲径(r=0.589),TG(r=0.571)に正の相関,HDL-C(r=-0.512)に負の相関があった.栄養素の変化量では,エネルギー,脂質,たんぱく質,炭水化物に相関はなく,ビタミンD(r=-0.539),食物繊維(r=-0.396),不溶性食物繊維(r=-0.445)に負の相関があった.食品群の変化量では,穀類や肉類,藻類,魚介類に相関はなく,野菜量(r=-0.552),緑黄色野菜(r=-0.405),きのこ類(r=-0.491)の摂取量が増えて負の相関があった.ビタミンDの変化量について血中AGEsの変化量を目的変数とした重回帰分析で,体重(P=0.783)に差はなく,ビタミンD(P=0.026)に有意差がみられた.ビタミンDの変化量が増えることで,体重とは関係なく独立して血中AGEsの変化量を減少させている可能性があると考えられた.
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