研究実績の概要 |
平成26年度には、教科書記述が別の教科書記述を分有(partake)しているとする片側関係を設定し、物理教科書に書かれている教育内容の構造を表現する理論的枠組みを提案した。平成27年度は、分節化された教科書記述から成る教育内容の集合A={a, b, c, ... } とクラスの生徒の有限集合X={ x1, x2, x3, ...}、および生徒xi(i=1, 2, ...)が分節化された教育内容aを理解していると教師が期待する度合いを示す特性関数f(a, xi)を設定し、教科書記述の分析と授業展開との関係を考察した。 分節化された教育内容の集合は、その要素間の論理的な関係をもつ半順序集合と考えることができる。しかし、その構造は教科書記述がもつ構造であって、実際の授業展開を表しているわけではない。そこで特性関数fを定義して、 授業プランの構造(授業展開)と関連付けて分析することができるようにした。要素a, b∈Aの間に関係a→bがあることを、1)aがbの一部を共有する片側関係が成立しており、2)すべてのxi∈Xに対して、f(ba,xi)≧f(ab, xi)であると定義する。ここで、f(ba,xi)= f(b, axi)f(a,xi)であり、f(ba,xi)は、aを教えた後にbを教えたときに、xiがそれらを理解していると教師が期待する度合いを表している。f(ab,xi)は教える順序が逆の場合の期待度である。fの値は現在の科学で明らかにすることはできず、教師の経験値として与えられる。特性関数fも合わせることで、集合Aの半順序構造(教科書記述間の関係)と、教師が作成した授業プランの順序構造との間に成立する関係を分析することができた。 平成27年度の成果として、Aの構造を束論的図形として表現し、力学教育分野で授業プランと教科書記述との関係を分析し発表した。
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