研究課題/領域番号 |
26350181
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
名越 利幸 岩手大学, 教育学部, 教授 (10527138)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気象庁NHM統合環境 / 数値実験 / 数値予報 / 大気環境教育 / 海陸風循環 / 名古屋大学CReSS |
研究実績の概要 |
26年度は,気象庁に貸与申請を行った気象庁NHM及び,気象研究所より貸与された既存のNHM統合環境システムを用い,岩手大学附属中学校2年生で研究授業を実施した。また,雲物理学に力点を置いた名古屋大学の気象数値シュミレーションソフト(CReSS)に関しても,非常に複雑な初期設定を簡単に行うために,中電プログラム開発部に委託した。 平成22年度,気象庁数値予報モデルは「中学校理科気象領域におけるメソモデルの利用方策の研究」と言う研究目的で本学から貸与申請を行った。すでに,本研究室において「MRI/JMA非静力学モデル」が現在使用可能な状態,また,気象研究所から貸与されたNHM統合環境は,ウィンドーズ7XPモードで動作することがわかり,そのシステムの環境整備を行った。結果,現在,本研究室のポータブルPC10台に,インストールし,動作する環境を構築できた。そこで,平成27年2月から3月にかけて,岩手大学附属中学校第2学年の4クラス160名に,局地気象現象として教科書に掲載されている「海陸風」を対象に,数値実験を目的とした研究授業(各2時間)を実施した。その成果は,本年5月の気象学会で発表する。 一方,気象庁NHMや名大CReSSは,FORTRANという数値計算言語でプログラムが書かれており,UNIXというOS上で動作するので中学生の使用は困難と考えられてきた。そこで,大気の運動を支配している連立偏微分方程式を解くため,初期設定を中学生でも容易に可能なインターフェースの作製を考えた。日本地図上から領域を指定したり,時間ステップや3次元格子点間隔などを,ワンクリックで指定しようとするものである。初期条件や境界条件などは,典型的な例を数例用意し,その物理的な意味付けを画面内に表記したり,生徒への理解を促す工夫も考える。このような意図で,「教育版インターフェース」の開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育に関する授業研究は,NHM統合環境をもちいた数値実験を2月~3月に行い,中学生の概念変化に関する考察の統計データは入手できている。今後,本格的なCReSSのインターフェース開発が終了後実施する授業実践に向け,研究授業の導入部分のアプロ-チに関して,きちんと抑えていきたい。 また,モデルのテストランとして2地域を考える。明瞭な局地気象現象が出現する愛媛県大洲市長浜町の「肱川あらし」に関しては,流体力学の相似則を利用した流体実験及びアメダスデータの解析などにより,その大気環境場が明らかになっている。本年3月1日に,DVD付 「これでキミも'あらし'予報士 Great Nature Story 肱川(ひじかわ)あらし」を,監修・執筆した。また,本学周辺の盛岡・雫石に関する大気環境場「北岩手波状雲」は,申請者による先行研究(科研費スタートアップ,基盤研究C),及び,本学の部局戦略経費事業「学校気象台」の蓄積データなどから,解析が完了し,結果,数値解と現実大気とを比較ができる状況にある。 一方,中電によるインターフェースプログラムの開発は,初年度の研究費を繰り越し,27年度予算との合計で決算することとなった。8月には,プログラムが納品されるので,その後,盛岡市内の中学校での授業実践を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3D数値実験により,学校付近の地域の大気環境を生徒自らが発見できるような教材を開発する。その際,気象学,特に局地気象学の研究対象を慎重に検討することが必要である。日本は島国であり海岸線や山岳は,ほぼ全国に分布している。その様な観点から,海陸風や山谷風,最近の都市化にともなうヒートアイランドなども対象にし易いと考える。これらをきちんと評価して検討する。パイロット校として,岩手大学附属中学校で当初実施をするが,数値計算結果の表現手法(気温,気圧,風の場の3D表現)などを試行し,生徒の理解に関して十分検討を加えた結果をもとに,盛岡市内各中学校での授業実践を行いたい。 一方,理科教育学から考察すると,生徒達にとって3D数値実験による居住地域の環境調査により,どのような科学リテラシーが身に付いたのか評価する。その手法として,観測の事前・事後にアンケート調査を実施し,CS分析など各種統計手法によって身に付いたものが何であるかを検討したい.このような取り組みを,義務教育段階の子ども達に実践させた例はない。この研究が実現・全国に普及すれば初の事例となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
中部電力プログラム開発部に,インターフェースプロプログラムを発注した為。 今年度予算と来年度予算による合算で支払うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
ソフト開発の時間とこちらからの要望を取り入れてもらうねらいから,中部電力のプログラムの納品時期が8月末となり,予算額も合算が望ましいと判断した為。
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