28年度は、気象庁NHMの使用開放を気象庁へ要請したが、快い返事がなかった。そのため、代替措置として、名古屋大学宇宙地球環境研究所の高解像度気象数値シミュレーションソフトCReSSを用いて、中学校理科で数値実験を実施するための諸設定用インターフェース画面を作成した。当該インターフェースは、「台風」、「低気圧」、「スーパーセル」の3つの気象現象について数値を設定できるものとした。このソフトを教育現場で実践するため、研究代表者の研究室保有の高速計算機で各気象事象に必要な計算時間を精査したところ、最も大がかりな「台風」においても6時間で結果が出ることがわかった。 そこで、気象事象を「台風」を設定し、計算の条件を日本近海の海水面温度が変化した場合、日本列島の陸地を全て標高0mにした場合、陸地を海に変えた場合のそれぞれの気象シミュレーションを作成し、岩手県盛岡市の公立中学校と岩手大学教育学部附属中学校の2年生計8クラス約320名を対象に研究授業を実施した。研究授業の実施にあたっては、授業の前後にプレポストテスト及び自由記述アンケートを実施し、統計処理のうえ理解度を測った。その結果、本気象シミュレーションソフトの活用により、海水温の上昇により台風が発達すること、山などの地形がないと豪雨が集中的に降ることがないこと等を生徒自らが見出すことができる等、生徒が気象現象の条件をコントロールした現象の変化を容易に理解できることがわかった。 今後、気象現象を「低気圧」や「スーパーセル」に設定したものについても教育実践を行い、その効果を検証していきたい。
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