研究課題/領域番号 |
26350184
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
片平 克弘 筑波大学, 人間系, 教授 (70214327)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 理科教育 / カリキュラム開発 / LPs / レリバンス |
研究実績の概要 |
近年、諸外国においては、科学概念や科学理論の構造化の作業が精力的に行われている。このような研究の流れの中で、アメリカでは、ラーニング・プログレションズ(LPs)に関係する研究が盛んになっている。LPsは、学問の中心となる概念や理論に関する学習者の発達的な特性を、学齢軸と学習内容のクロス表で示したもの」である。この表には、1980年代から行われてきたミスコンセプション研究の成果である、幼稚園から高校3年生までの幼児・児童・生徒達の科学的理解の発達過程が示されている。LPsの研究知見をもとに、K-12科学教育フレームワーク(A Framework for K-12 Science Education)がアメリカで出版された。 本年度は、アメリカの「K-12科学教育フレームワーク」の分析に基づき、LPsを踏まえた多次元的評価について吟味した。 Lpsを指標として作成した多肢選択式の評価では、1)児童生徒の理解度を多元的に評価することが可能となる、2)調査問題を定式化し日頃の評価に生かしやすくする、2点を明らかにした。たとえば、1)に関しては、Furtal et al.(2014)の評価方略から、「自然選択説」の概念が5つの事実(fact)と3つの推論(inference)へ細分化されていること、Alonzo et al.(2009)の評価方略では、「力と運動」の概念がForce、No Force、Motion、No motionという4つの状態へ細分化できることを指摘した。さらに、2)に関しては、「自然選択説」と「力の概念」の具体的な評価問題を取り上げ、選択肢がそれぞれのLpsに対応しており、概念の理解度を点数化しやすい点を明らかにし、この点数化により、日頃行われている評価を変えていく方向性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者から、我が国の理科授業の実態に関するデータを収集し、以下の点が明らかになった。 1)理科の学習内容の系統性の不備が依然として存在している。 2)教員が小中高の系統性に配慮した授業を十分に行うことができていない。 3)児童生徒が学習内容の系統性を認識することができていない。 一方、理科教育で扱う科学概念に関する児童・生徒の理解の進展(深まり)に関する文献は年々増え続けており、これらの分析を継続している行っているが、来年度も継続する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
・作成した物理分野と化学分野のLPsの内容および質の吟味を、研究協力者と研究者が検討する。 ・LPs活用型教授法(試案)で用いる、学習課題や発問を継続して行う。 ・最終年の平成28年度は、LPsに基づく生徒の科学的理解の深化を目指した教授法を実践する。 ・実践データを分析し、教授法の改良を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、購入を予定していた研究資料の出版が遅れてしまったために、購入ができず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究資料の出版を待ち、その購入に充てる予定である。
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