研究課題/領域番号 |
26350185
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
植松 晴子 (小松晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 相互作用型授業 / 学習姿勢 / 能動的関与 / 授業観 / パターンマッチング / ファシリテーション |
研究実績の概要 |
1. 物理概念の獲得を妨げる要素の調査 素朴概念とともに物理概念の獲得を妨げる要素として,パターンマッチング的思考や暗記傾向があることが明らかになってきた.このような傾向の現れやすい問題の分野や設定について前年度の調査結果に基づいて検討して,パターンマッチング的思考・暗記姿勢を素朴概念と切り分けて抽出する問題を設定し,個別聞き取り調査を行った.その結果,同一の概念に対して,定性的な理解を示す場合とパターンマッチング的思考に頼る場合の双方が見られた.それは,議論の中で問われるとき,試験問題として解くとき等,状況に依存して現れる.基本的な概念でも,問題設定に応じて過去の学習内容を断片的に使い分け,一貫したメンタルモデルが構築されていない様子も見られた. 2. TAの教育について 相互作用型授業を有効にするファシリテーションでは,学習者の学習姿勢を能動的なものに変容させることが重要である.相互作用型授業が活発に行われている米国の大学でのTA教育の系統的手法を調査し,導入を検討した.また,学習内容を教える位置づけであるティーチングアシスタントに比べて,ラーニングアシスタントは学習者の能動的姿勢を引き出すことに力点が置かれている.そのシステムについても調査を行った. 3. 教員の意識の共有について 学習者の能動的関与を促す取り組みを所属機関内で一貫して行うために,授業研究会を行った.入門物理学に関わる講義,実験,演習は独立に行われてはいるが,それらの科目を担当する複数教員が授業研究会で意識を共有するようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互作用型授業で物理概念をある程度正しく獲得しながらも,学習者に残るパターンマッチング的思考・暗記傾向が現れることについて,問う問題の分野や設定に加えて,問われる状況や過去の学習の経験など多くの要素が関わることが明らかになってきた. TAの教育の中で,学生のもつ素朴概念に関する知識を明示的に与えるとともに,学習観への働きかけを継続的に行い,TA教育の中にも相互的関与を取り入れた.学習観を変容させる取り組みは難しいことが指摘されているが,相互作用型授業を行った学生に対して行った学習観に関する標準的な調査では,いくつかのカテゴリーで向上が見られた. 授業研究会の開催によって,機関内の教員が担当外の授業内容も把握し,学生の授業観や理解度の情報を共有するようになった.
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今後の研究の推進方策 |
授業に関連する課題で学生が書いた記述や聞き取り調査の記録から,パターンマッチング的思考・暗記傾向が物理概念の獲得にどう影響するのかを検討する.また,これらの思考と問題の分野や設定,問われる状況,学習履歴等のさまざまな要素との関連を分析し,思考法や学習姿勢に働きかける方策を検討する. TA教育を改善しながら実施して,相互作用型授業のファシリテーションに活かし,継続的な学生の学習観調査によって効果を測る. 継続的に授業研究会を実施して,機関内の教員が相互の授業内容と学生の実態の理解を共有し,物理概念獲得に有効なカリキュラムを検討する.
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