1. 相互作用型授業を通じた学生の物理概念の獲得について 米国で開発された教材を用いた相互作用型物理授業の日本の大学での継続的な実践によって,オリジナルの意図を損なうことなく,日本のカリキュラム,授業観・学習観に適合した教材や実施方法を見出すことが可能になってきた.一方前年度までの研究により,学習者が基本的概念を理解する過程も学習者の抱える困難も想定以上に多様であることが明らかになった.そこで,これまでの実践で蓄積した学習者についてのデータを反映して,教材の開発により多様な学習者の困難を取り入れた.また,教材に認知的葛藤を生ずる設計を施しても,必ずしもそれが機能しない場合があることも明らかになった. 2. ファシリテーションの質向上について 学習者の多様性に対応するために,これまで物理専攻の教員や大学生が担当してきた相互作用型授業のファシリテーションに,物理非専攻の大学院生を加えた.これにより,プログラムの開発に新しい視点を組み込むことができた. 3. 教員間の意識の共有について 本研究で実践している相互作用型授業を,所属機関で複数クラス開設として他の教員と共同で授業を行い意識の共有を図っている.また,理科全体の実験授業で学生の能動的関与を促す取り組みを継続的に行い,他分野の教員と互いの教育研究の知見を共有している.さらに,大学教員と高校教員とで連携し,教育研究に基づいた実践を行い調査結果を研究にフィードバックする体制を整えている.
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