本研究の目的は、大学院教育において効率のよい航空機技術者の人材育成を目指し、理論的知識や能力を基礎として学生が主体的に取り組める教育プログラムを構築することである.航空機技術者の育成を大学院教育で行うには航空機開発プロセスの体験が効率的で,その実現には従来の授業に対し,次の変更が求められる.①従来の講義に、新たに演習,実験,発表を授業に加える②授業を専門が異なる複数の教員で運営する③航空機開発プロセスは時間がかかり、前年度の成果を次年度学生に引き継ぐ. 本研究では授業は従来の講義に加え演習,実験,発表からなる形態にした.講義では学生に設計,実験等の理論,方法を教え,演習ではこの講義を基に学生が設計,実験を実践し,年度末に成果を発表させる授業運営とした.また講師は空力等の分野をカバーするよう教員4人+外部講師1人の態勢で運営した.さらに成果の次年度学生への引き継ぎを円滑に行うため,前年度の受講学生がTA(Technical Assistant)として演習,実験に参加した. 平成26年度は2m級ジェットエンジン駆動先尾翼型飛行機の設計及び製作を完了した.先尾翼機は安定設計が難しく,また設計資料が乏しいため,高度専門技術者育成の題材に適している.平成27年度は飛行機の地上走行実験を行い,その結果を受け改良設計・製作を実施した.また飛行機の安定性向上のため、空力実験及び改良設計を行った.平成28年度は 地上走行実験及び飛行実験を行い,安定した飛行が得られ,性能も当初目標を達成できた. 本研究の評価の把握のため,学生に対し授業アンケートを実施し,航空産業技術者育成に本教育システムが有効であると確認できた.成果のアピールで学会発表に加え,平成28年10月に開催された国際宇宙航空展に本飛行機を展示し,授業で飛行機開発をしたと関心を集めた. これらの結果本研究の目的は達成したと考える.
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