本研究は、主として機械系学習者を対象にした動力学問題(運動と振動)学習用教材の開発を目的として行った。具体的には、①物理等における力学問題(等(角)速度運動と等(角)加速度運動)を公式を一切使わずに解くための教材開発、②運動方程式を数値計算により解き、解析結果をグラフィック出力するという一連の作業を支援するためのソフトウェア(教育用運動シミュレーションシステム(DSS):研究代表者が開発)への新しい機能の追加(新DSSの構築)、③運動や振動現象(とりわけ共振と振動モードに注目)の観察を目的とした各種実験装置の開発を行うことであった。平成26年度から平成28年度までの3年間の研究を通して、上述の①から③の目的は概ね達成できた。平成28年度の主たる研究成果は、次の3点である。 1.運動や振動現象の観察を目的とした各種実験装置の開発:持ち運びに便利な、軽量・コンパクトな折りたたみ式簡易ぶらんこ(係数励振という特殊な振動。重りの上下運動とぶらんこの触れ角を解析変数とする2自由度問題。)を開発し、このぶらんこに適した漕ぎ方をシミュレーションを通して提案した。さらに、クレーンの旋回運動(運動方程式が複雑な問題。旋回特性を入力変数とし、つり荷の挙動を解析変数とする2自由度問題。)に関する実験装置を開発した。いずれも、実験結果とDSSを用いたシミュレーション結果はよく一致した。 2.新DSSへの動画の組込み:平成27年度に開発したDSS用「MOVIE」を用いて、これまでに開発済みの実験装置を用いた運動や振動の画像をDSSに組み込んだ。 3.DSSを用いた運動・振動問題学習プログラムの提案:これまでに開発した各種学習用教材の有効利用を目的とした、運動・振動問題学習プログラムを提案した。
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