研究課題/領域番号 |
26350218
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
天造 秀樹 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 講師 (90353333)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線教育 / スプレー型入力インターフェース / 放射線の生物学的影響 / 放射線シミュレーションコードの応用 |
研究実績の概要 |
放射線防護に関する教育の重要度が増してきている。放射線の安全利用や除染の対応等においては広く一般の人も含んでの定量的議論が必要となる。定量的議論においてはその単位等の定義のみではなく、その量的感覚を理解していることが重要となる。しかしながら、学生や一般人に放射線の性質や人体への影響を短時間で線量の数量とともに放射線障害等を直感的に理解させることは難しい。特に線量の単位であるグレイやシーベルト表記の数量を直感的に理解させることは難しい。そこで、本研究では、大型モニター上に表示された人体CGモデルに放射線源を模した模擬スプレーを吹き付ける動作を行うことで被ばく影響を視覚的に理解できる教育ツールを開発することを目的とした。 本研究ではいかに線量を高速に計算するかが重要である。類似研究としてシミュレーションで精度よく評価する手法があるが、本研究では視覚的に同一でれば、問題ないという条件のもとで誤差を許容し、むしろリアルタイム性を追求することにしている。線量計算にはPHITSを用い、人体のMIRDファントムを用いて、あらかじめ複数の入射点に対する線量の応答関数のテーブルを作成することができた。照射時にはテーブルを基に各入射放射線分布に対し、内挿計算により簡易的に線量計算を行うことができるようになった。 また、スプレー型仮想放射線源にはLEAP MOTIONを用いることで課題の解決を図った。非接触でスプレーの空間位置を計測することができるようになっており、また座標変換を行うことでモニター上の位置と合致させることにも成功している。スプレー型インターフェースには圧力センサーを備え付け、マイコンを使い、無線でトリガーを引く力をホストコンピュータに転送するようにした。各部位に照射された線量を内挿法で計算し、線量に応じてグラフィック上で色により線量分布を表現するプログラムの開発にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度内の予定として計画していた人体モデルの設定及び、スプレー型仮想放射線源の製作を年度内に予定通り完了することができた。当初の予定では、スプレー型仮想放射線源の位置センサーとして赤外線を使ったゲームコントローラーを考えていたが、ドライバーに問題が見つかり、代わりにLEAP MOTIONを用いた。LEAP MOTIONは、指先の動きを非接触で計測する機能を有しており、本システムでは、スプレーガンのノズル部分を感知するように変更し、使用している。また、MIRDファントムを使った計算においては、ICRP Pub.60のデータと本研究室で計算した値とを比較し、良好に一致していることを確認済みである。現在は、スプレー型仮想放射線源をモニター上の人体の図に向かい、トリガーを引くことで、各部位での線量を内挿法により計算し、リアルタイムに人体上にグラフィカルに実効線量及び、等価線量を描画することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
ICRP Pub.60とベンチマークテストを実施済みであり、応答関数の計算には問題無いことは確認済みであるが、内挿法による計算に対するベンチマークテストがまだである。離散的な複数入射点モデルにより計算した線量分布データを用いて、中間入射点に対する応答関数のベンチマークテストを行う。中間地点に対する計算は内挿法により近似計算する。厳密な計算により求めた照射線量分布と簡単な離散的な複数入射点モデルによる近似計算により求めた照射線量分布との視覚的な類似性について評価する。一般の医療系等のベンチマークテストとは異なり、画像によって学習者は線量を認識するため、高い精度を要求せず、むしろ、近似計算の速度を優先させた評価を行う。視覚的に分布が近似できていることを確認すれば、ガンマ線を10cm区画間隔で入射させて、入射地点ごとの等価線量のデータテーブルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
荷物搬送費が想定より安価に済ますことができたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
スプレー型インターフェースの試作費として執行する計画である。
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