本研究では、大型モニター上に表示された人体CGモデルに放射線源を模した模擬スプレーを吹き付ける動作を行うことで被ばく影響を視覚的に理解できる教育ツールを開発することを目的とした。人体への各入射点における等価線量の応答関数の計算にはPHITSを用いた。初年度は詳細な人体モデルで人体の応答関数の計算を行った。人体モデルが正しく入力されていることを確かめたのちに入射点による応答関数の違いに気を付けながら代表的な複数の入射点を決定して離散的な複数入射点モデルのデータテーブルとして保存していった。 離散的な複数入射点モデルにより計算した線量分布データを用いて、中間入射点に対する応答関数のベンチマークテストを行った。中間地点に対する計算は内挿法により近似計算する。厳密な計算により求めた照射線量分布と簡単な離散的な複数入射点モデルによる近似計算により求めた照射線量分布との視覚的な類似性について評価した。一般の医療系等のベンチマークテストとは異なり、画像によって学習者は線量を認識するため、高い精度を要求せず、むしろ、近似計算の速度を優先させた評価を行った。入射地点ごとの等価線量のデータテーブルを作成した。28年度にはベンチマーク済みデータをシステムに入力し動作確認試験を行った。システムの動作の問題点やインターフェースの改良を行う。学習者にとって一番重要な情報を表示させるので、インターフェースの改良には全体のスケジュールの中でも相対的に十分と思われる時間を割いておく。すでに実装した経験を有することからインターフェースの修正等に時間がかかるものの、技術的な困難はなく、完遂できる。視覚効果の検証と変更に作業を行い、適切な計算領域の探索と評価を平行しながら実施した。科学体験イベント等を実施して、アンケートを回収し、利用方法や学習効果等の検証を行いながら教育ツールとしての完成度を高めていった。
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