研究課題/領域番号 |
26350224
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山田 洋一 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (50143186)
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研究分担者 |
南 伸昌 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (80292572)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 化学反応可視化 / 溶解 / 化学変化 |
研究実績の概要 |
26年度は,(1)合成及び天然高分子化合物の溶解に伴う物理変化を,本システムにより光学的に認識する高分子化合物の溶解認識教材,(2)分解生成物の分子,無機及び有機塩類の本システムを活用した安全確実な分析手法体験(以上高校1年生用),(3)目に見えない化学変化を追跡する簡易クロマトグラフィー手法体験(同2,3年生用)コンテンツ集を各種開発した。 (1),(2)ではスペクトルと光の吸収特性にも触れ,溶存分子(イオン)と溶媒の相互作用を体験する実験を検討した。(1)は,水溶液中の高分子有機化合物の分子振動解析と,それに基づく同定法の確立をメインに検討した。(2)は,さらに分解生成物の分子,無機及び有機塩類についても本システムを適用して安全確実な分析方法を検討した。さらに,光の吸収とスペクトルの関係を分かりやすく示す方法を検討した。さらに,新しい電気分解及び電池教材の提案とその指導法についての検討を行った。 (3)は非水溶媒兼用の有機酸の中での中和反応の可視化や,簡単なクロマトグラフィーによる化学変化の追跡体験する実験を検討した。発色試薬との化学変化の過程を詳細に検討し,分析法の基礎を理解するシステムを検討した。その成果を大学での高大連携科学実験講座でのテーマとして試行した。その結果のフィード・バックにより,今後より実践的な開発を行う。 選択理科の授業,課外活動などの学校教育の現場で取り扱うには,施設・設備面での制約や,教員の知識不足による不都合が生じる可能性もあるが,一部は中学校でも実施可能なように代替器具の紹介や,周辺知識の提供,技術指導を含めた形のコンテンツとすべく,指導法を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤外線,可視光,紫外線領域の電磁波スペクトル特性から,可溶性デンプン,サリシンなどの分解生成物を検出し,特定する方法を確立した。 簡易な電気分解及び電池教材の開発と提案を行い,合わせてその指導法について検討した結果を,宇都宮大学教育学部紀要第65号 第2部 pp.11-20 (2015) に初期の成果として報告した。 高大連携科学研究のテーマとしても成果を活用し,平成27年3月25日のお茶の水女子大学におけるSSH課題研究成果報告会において,栃木県立宇都宮女子高等学校(生徒発表)によりポスター発表した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度以降は,各実験コンテンツに磨きをかけると共に,その適用範囲を検討する。 (1)初年度に検討した高分子有機化合物,分解生成物,それぞれの構造(化学結合)に特徴的なスペクトル特性を用いた「水溶液成分の可視化」について,実験条件を詳細につめて,本システムで観測可能な高分子化合物を増やし,一般的な可視化へとつなげる。水溶液では水分子の吸収が強いので,まず,有機溶媒中の吸収極大波数を各種化合物について,データを集める。その際,主に溶媒分子の極性と溶質分子の極性(またはイオンの価数等)の関係に沿ってデータを解釈し,本システムの改良を行う。 (2)化学変化(化学反応)の追跡には,溶媒抽出と組み合わせたクロマトグラフィーや基本的な呈色反応を用いる手法と,水を溶媒として使用しない条件での化学反応(特に脱水縮合反応)から生じる水を検出する方法の最適化について,実験条件を詳細に検討する。 (3)金属結合の中で電子(自由電子)が移動する様子を,導体の電気抵抗の温度依存性から考える教材,溶液の蒸気圧降下を可視化する教材,その他の教材を検討する。
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