研究課題/領域番号 |
26350230
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
上里 正男 山梨大学, 総合研究部, 教授 (80193788)
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研究分担者 |
松森 靖夫 山梨大学, 総合研究部, 教授 (40240866)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 科学技術教育 / 学力 / 教育課程 / 比較 |
研究実績の概要 |
1.フランスの科学教育と技術教育として、次の科学技術教育の概念を表す教科があることが明らかになった。「世界の発見」科が、幼稚園では教育の領域として、小学校(5年制)の基礎学習期の小学校第1・2学年では教科としてある。「世界の発見」科は、科学教育と技術教育との関連が強く、時間と空間の概念と世界に関する知識を獲得する生活環境に関する日本の生活科に似た総合的教科である。この教科は、小学校の深化学習期の第3・4・5学年における科学的教育の領域における教科としての「実験科学・技術」科に接続される(学習の構造化)。この「実験科学・技術」科は、科学的教育としての科学教育と技術教育との統合教科である。中学校の適応期の第1学年(第6級)と中心期の第2・3学年(第5・4級)では、1995年の教科としての「技術」科から変化がおこり、小学校の科学的教育教科である「実験科学・技術」科と連続した教科としてのScience et techniques 「科学・技術」科が中学校に登場し、その科目としてのTechnologie「技術」科が設置された。その一方、進路指導期では、1995年の教科としての「技術」科の伝統を受け継ぐ科学教育と技術教育とが分化した教科としてのTechnologie「技術」科が設置された。特に、中学校における技術(テクノロジー:Technologie )科教育が、STEM教育的な傾向をもち、高校のEngineering教育である「エンジニア科学」科教育との連続の傾向をもつことが明らかになった。 2.研究分担者である理科教育研究者との共同討論として、科学技術教育における日常的概念が学習者の科学的理解を促すことと,科学技術教育において生活概念とものづくりの視点に立脚した教育課程が構想できることを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.日仏比較研究に不可欠な、生活科教育、サイエンス教育、テクノロジー教育、エンジニア科学教育、それらと関連するSTEM教育における基礎概念やTechnical Termの内容や特徴を明らかにし、それらを比較可能にする研究方法論の基礎についての検討を行った。 2.現代教育学の科学的な研究方法論では、子ども中心の発達に基づく生活概念が教育目標・内容の系統的・基本的な科学的概念によってどのように再構成されるかが学力論や教育課程論や教材論などのレベルでの研究課題となっている。この最新の研究課題の視点に立てば、日本の科学技術教育の論点の一つである教育内容の「科学性」、すなわち教育内容の科学的根拠や科学的系統性が問われるとともに、それが子どもの発達に基づく生活概念の再構成にどのように関連づけられるかが問題とされなければならない。つまり、 本研究では、現代教育学の科学的な研究方法論である生活概念を科学的概念によって再構成するという一元論の概念装置をもって日仏比較の座標軸とし、科学技術教育の学力論と教育課程論を分析するものであるが、フランスでは、1.よりSTEM教育として、科学とテクノロジーの各教科に共通する学力と教育課程が構想されていることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
日本の科学技術教育史では、現在の生活科や総合学習のような子ども中心の生活概念の視点への注目は、戦後の経験主義教育論の影響に見ることができ、それに対して教育内容の科学的根拠や系統性が問われてきた。いわば二元論で論議が進められ、統一した一元論からの研究方法論が確立している状況にはない。しかし、小・中・高を一貫した科学技術教育の教育課程を構想するとき、初等教育における子ども中心の興味や体験などに基づく生活概念の重視と、中等教育の教育内容の科学的概念の重視とは関連づけられる必要がある。本研究でも、現代教育学の科学的な研究方法論である生活概念を科学的概念によって再構成するという一元論の概念装置をもって日仏比較の座標軸とし、科学技術教育の学力論と教育課程論を分析し、今後の研究の推進方策としなければならない。
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