研究課題/領域番号 |
26350232
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
原田 信一 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90646647)
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研究分担者 |
安東 茂樹 京都教育大学, その他部局等, その他 (40273817)
岳野 公人 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70313632)
道法 浩孝 高知大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (90457408)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知識基盤社会 / 技術科教育 / ものづくり経験 / 技術的素養 / 学習意欲 / 自己効力 |
研究実績の概要 |
本研究は知識基盤社会における技術科教育の有益さや人間形成上の必要性について,日本の技術文化を伝承しているマイスター・職人(以下,マイスター)を対象に調査等を行い,技術科教育が,いずれは人格の形成,すなわち「ものづくりは人づくり」にもつながることについて究明する。 平成26年度は,知識基盤社会における技術科の技術的素養の育成に関するマイスター(職人)調査として,9月に兵庫県三木市と小野市,11月に青森県八戸市,青森市,及び弘前市で職人を対象とした面接法による聞き取り調査を実施した。そして,工具を製造している三木市や小野市の職人や,ものづくりをしながらその伝統技法を後継者に伝えている青森の職人などから,ものづくりに関する有益な考えを聞くことができた。職人の考え方は,日常の技術文化の原点であるとともに,ものづくりの意義の再確認ができた。今後は,技術科の技術的素養の育成にものづくりが関係していることについて,さらに研究を進めていく。 次に,中学校技術科ものづくり学習における生徒の学習意欲やのこぎり使用の自己スキル意識などについて,地域及び家庭環境の異なる3つのタイプの公立中学校3校で調査を実施し,分析と考察を行なった。その結果,ものづくり経験の豊富な生徒ほど,ものづくり学習における学習意欲やものづくり実習に対する意識の高いことが分かった。また,のこぎり使用の自己スキル意識では,「できる」という意識は男子が高く,「こわい」「苦手」などの意識は女子が高い傾向にあり,この男女の特徴が3校とも一致した。これらのことから,のこぎり使用経験や家庭におけるものづくり経験の有無が,のこぎり使用における「できる」という意識の形成に関与していることが示唆された。そして,研究成果について,日本産業技術教育学会近畿支部大会及び国際会議で発表等することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は当初の計画どおり,マイスター調査の実施,及び中学生を対象とした,ものづくり体験や生活経験の実態を把握するため,京都教育大学附属中学校及び公立中学校で調査を行った。このことから,よりよい「ものづくり学習」を展開するために,ものづくり学習における学習意欲や生徒が工具を使用する際の心理的側面を把握することが重要であることが示唆された。また,平成27年度の計画であった学習意欲や自己効力,スキル意識との関連性については,予定より早く調査を実施し、分析することができた。 平成26年度に計画していた技術科担当教師を対象にした学習指導要領の実地状況等を把握するための調査は,現在,その準備を進めており,今年度中に調査,分析できるものと思われる。これらのことから,平成26年度及び平成27年度に計画している研究は,おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,知識基盤社会における技術科教育の有益さや技術的素養の必要性について検証するため,マイスター調査を継続的に実施するとともに,技術科担当教師を対象にした学習指導要領の実地状況等を把握するための調査を実施し,分析を行う。さらに,中学生における技術科ものづくり実習における価値・重要度等の状況を調査・分析する。 平成28年度は以下を計画している。技術科教育では,ものづくりを通して基礎的・基本的な知識や技能を習得することにより,技術的素養を形成することが重要である。技術的素養を育成することは,結果として,生徒の「生きる力」の育成につながっており,生徒の人間形成にまで効果が期待できる。過去2年間の調査や聞き取りで明らかになってきた,マイスター調査及び学習指導要領実施状況の調査結果,そして生徒のものづくり経験と技術科教育の価値・重要性,役割について,さらに技術科教育で育成される資質や能力と学習意欲との関係を明らかにする。そして,生徒の実態や学習指導要領の実施状況結果を基に教材開発を行う。開発した教材は,授業で活用することにより,教科の学習内容が十分含まれており,教科の目標が達成できることを重視する。また,カリキュラムでは,教科の目標を達成するための価値やねらいを備えているカリキュラムを開発することで,技術科ものづくり学習における人間形成をはぐくむ「カリキュラム開発」及び「教材開発」の構築につながると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の1点目として,研究協力者との連絡は,メールや電話を中心に行ない,共通に加入している学会などを利用して連携を図ったため,旅費が生じなかった。2点目として,平成26年度に計画していた技術科担当教師を対象にした学習指導要領の実地状況等を把握するための調査は,現在,その準備を進めているところである。この調査を実施するに当たり,封筒や郵送料などの物品費,調査票のデータ入力に係る人件費が生じなかった。さらに,調査データを分析する統計ソフトや,授業実践等を記録するデジタルビデオカメラの購入が生じなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,前年度に計画していた技術科担当教師を対象にした学習指導要領の実地状況等を把握するための調査を実施し,分析を行う。その際,封筒や郵送料などの物品費,調査票のデータ入力に係る人件費,調査データを分析する統計ソフト,及び授業実践等を記録するデジタルビデオカメラを購入する計画であり,平成26年度に使用できなかった予算の執行を行う予定である。また,平成27年度は,附属学校等における教材開発に使用する材料や工具等を購入する予定である。さらに研究成果を発表するため,学会等に参加する。
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