平成28年度は,鍵教材「水」「光」「温度」の視点から小学校理科カリキュラムマップを作成して,単元内容間の関連性を具体化した。「水」については,液体としての水,生命を支える水,循環する水という共通性を見出し,その各共通項において,つながりを具体化するためのハブ(中核)や総括となる単元,つながりを導くための教材や展開案,学年進行に沿った教材のつながりの順序性において考慮すべきポイントを提示することができた。また,「光」については,光の性質の理解が太陽と影や月の満ち欠けの学習の基礎になること,光エネルギーの変換や輻射,加熱,発熱などによる温度上昇が学年を越えて扱われていること,教材の科学的な内容での結び付きだけでなく,観察実験の操作,教具,データの分析などの学習方法と重ね合わせた関連づけが必要なことなどを導出することができた。「温度」については,数値化が可能なため,結果を表やグラフにまとめる学習に結び付けやすく,算数で学習するデータ処理の方法やグラフの解釈等の学習方法に配慮した関連づけが必要になることや,「温度」と「熱」という用語の使い分けを意識的に行う必要があることを明らかにした。 科学的な問題解決スキルについては,前年度に提示したアイデアを精査して,科学的な思考に関するスキル,身体的な操作を含む観察・実験に関するスキル,および科学的なコミュニケーションに関するスキルを具体化した。また,温度を「測定する」というスキルを例にして,各学年段階での特徴やつながりを具体化し,温度計を操作するスキル,測定のための条件制御に関するスキル,グラフの作成と解釈に関するスキルが学年を越えて発達するようなカリキュラム・デザイン,授業デザインが必要なことを示した。なお,カリキュラム・マップ等の結果は,http://www2.educ.kumamoto-u.ac.jp/~shige/で公開している。
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