本研究では,義務教育課程の理科では扱われない紫外線と,現行の学習指導要領(中・理科)から復活した放射線について,沖縄の自然と社会的環境を考慮した学習教材の開発に取り組んだ。 紫外線と放射線に関するアンケート調査を実施したところ,紫外線の健康影響は広く認知されていたが,その危険意識は他のリスク項目に比べ低く,知識も不十分だった。また,知識の有無と紫外線に対する意識に関連は見られず,紫外線教育の普及には,知識のみでなく生活の場で紫外線を意識できるような機会が重要と考え,市販デジタルカメラを用いた紫外線撮影装置の開発を行った。放射線については,中学校で学習した学生の方が,放射線に関する知識が高い傾向が見られたが,統計学的に有意な差はなかった。また,学習指導要領で明記された放射線利用については,有意差は見られなかった。福島第一原発事故が収束しない状況で,社会の関心が放射線の環境や人体影響に集まる中,放射線利用が授業でどの程度扱われたのか,今後調査が必要である。また,害虫駆除やラドンの存在など,沖縄と関係が深い項目についても学生の認知度は低く,地域の実情に合わせた放射線教育が今後求められる。 放射線の利用や,人体への影響を理解するには,放射線が持つエネルギーを実感することが重要である。そこで,放射線損傷を視覚的に確認出来る固体飛跡検出器を教材として利用するために,CR-39のエッチング溶液の低濃度化や観察手法に関する検討を行い,学校現場における安全な活用法を提案した。さらに,県内の環境放射線量率の調査を行い,教材化のための基礎データを収集した。調査地点には,地学分野での活用も念頭に野外実習に適した露頭等を中心に測定を実施した。これらの教材については「紫外線・放射線教育プログラム」の基本教材としてを整備し,学校現場で活用する。
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