研究課題/領域番号 |
26350241
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
田柳 恵美子 公立はこだて未来大学, 社会連携センター, 教授 (30522114)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 科学技術とCSR(企業の社会的責任) / コーポレートサイエンスコミュニケーション / 科学技術広報 / プロフェッショナル組織 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画の3つの柱について、次のとおり推進した。 1.社会的責任(CSR)の理論研究:組織論のプロフェッショナル組織研究は、技術者や研究者を多く抱える20世紀のメーカー群を中心に行われてきたが、これを科学技術社会論の分野で展開されてきた産業科学(industrial science)という概念と融合させる理論的考察を行い、本研究の主要対象テーマを「科学を基盤とする(science-based)企業によるCSR活動」として捉え直す理論構築を行った。当初テーマとしていた「教育・学習型CSR活動のコミュニティ関与」をCSR全体の中に定位するために、「科学を基盤とする企業」が展開してきた広い意味でのCSR(国家的コンソーシアムや産学連携の展開、科学技術広報活動、技術倫理規程の制定などまで含めて)を類型化する作業を行った。 2.調査分析:昨年度に作成した科学技術分野でプロボノ活動(研究職・技術職の社員を小学校や地域の課外教育活動の出前講座の講師として派遣する等)を展開する企業250社のデータベースを参照し、これらの企業群が具体的に展開してきた広義の社会的責任活動を想定しながら、1.の理論的な類型化を行った。また島津製作所のCSR担当者及びプロボノ活動を牽引する研究管理職OBを対象に過去に行ったインタビューを再分析し、上記類型化を検証した。 3.成果発表:以上の1.2.を通じた研究成果をまとめ、2つの国内学会(科学技術社会論学会、日本広報学会)で口頭発表を行った。さらに2016年度4~5月に実施される科学技術社会論や科学コミュニケーション研究の分野での2つの国際会議(PCST2016/STS Gratz)のポスター発表に採択され、発表準備を行った。これらの会議で各国の研究者や専門家らと議論を深めた結果を、最終年度の活動計画に反映させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実証研究よりも理論構築を優先させることで、これまで行われてこなかった「科学を基盤とする企業の科学分野でのCSR活動」という新しい角度でCSRの重要分野の理論を構築することができた。これにより科学教育型のCSR活動を企業や従業員のCSR活動全体の中へマッピングするための仮説的モデルを構築することができた。その成果を2つの国内会議で発表するとともに、翌年度の2つの国際会議への発表エントリへ進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、はじめに国際会議での発表を行い、研究者や専門家らとの仮説モデルに関するディスカッションを得て、これを反映させながら理論構築を改善するとともに、最終的な実証研究のための調査分析を行う。島津製作所をはじめ、(産業)科学を基盤とする代表的あるいは特徴的な企業を数社ピックアップし、一次資料や関係者へのインタビューを実施して実証分析を行い、成果を原著論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、本年度に海外での国際会議で発表する計画であったが、翌年度始めの国際会議での発表になったため、海外出張旅費分を翌年に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外(トルコ、オーストリア)での国際会議への海外出張旅費として使用する予定。
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