本研究計画の最終年度となる三年目においては、これまでの調査結果を分析するとともに、追跡的な調査および補完的な調査として、イカリモンハンミョウの生息地である石川県羽咋市、ツシマヤマネコの生息地である長崎県対馬市、コウノトリの野生復帰地である兵庫県豊岡市、ヨナグニサンの生息地である沖縄県与那国町などの自治体調査を展開した。また国外の調査事例として、カンボジア国シェムリアップ市およびその周辺域の調査を実施した。これらの調査結果に1・2年目の調査結果を加えて、いくつかのペーパーを作成し発表を行った。 環境教育が実際に実践される自治体レベルに注目し、その自治体の環境課題の性質によってどのように環境教育を構想すべきかの方向性を見出すことを目的とした考察を行った。3年間の研究活動の中で、野生復帰という課題がある自治体において、それが事業として実施される地域の住民の協力には環境教育や意識啓発が重要であり、その内容がどうあるべきかについて質問紙調査などといった手法を用いて分析を行ったことにより、住民の意識の実態調査および住民の意向に基づく考察は効果的かつ効率的な環境教育を企図するために重要である、ということが示された。環境課題の庸俗性についての検討に関しては、自治体の中での庸俗性と非庸俗性があることが明らかとなり、自治体が環境課題に対して単純な視点を持っていないこと、そして自治体をひとつの単位として分析することの難しさを把握することができた。
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