研究課題/領域番号 |
26350246
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
大山 恭弘 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (00233289)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 価値の見える化 / ものづくり教育 / e-learning |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ものづくり教育の質の向上を図るために、ものづくりの経験価値の見える化を用いた共創的ものづくり教育プラットフォームを開発し、これを用いて共創が生じるメカニズムを見出すことである。本研究では、ものづくり教育授業を受ける学生を対象とし、経験価値の見える化を図ることで、1)各学習者がどれだけ感動や満足感を感じ、その上で、継続的学習意欲をどれだけ維持できるのかを検証し、2)他人の感動や満足感をどれだけ共有でき、そのことが共創(他者と連携してよりよいモノを作り出そうとする行為)にどれだけ結び付くのかを検証する。 本年度は、まず、実験環境であるプラットフォームを整備した。プラットフォームでは、学習者の行動を3次元モーションキャプチャやハイスピードカメラにより収録・観察するとともに、その様子を他の学習者に伝達でき、データ収集、その分析を行える構成とした。3次元モーションキャプチャは、学習者の頭、手、足の関節の軌跡を保存し,後にスケルトンまたはアバターモデルとして表示させるものであり、スケルトンモデルのアニメーション表示も構築した。次に、プラットフォームを試験運用しながら、その中で、A)経験価値の項目と見える化の検討とB)共創の項目検証とメカニズム分析を行い、被験者の感動や満足感との関連付けと、この結果のデータベース化を図った。A)の経験価値とは、既に学習した知識や技能に該当し、B)共創の項目とは、グループワーク内にて役割分担または共同作業にて得られた経験に該当するとした。A)は他の講義等で履修・修得・経験した知識と技能(電子回路学や基礎力学等)を学生からのアンケート等によりデータテーブル内に保存し、B)は実験・実習等で修得・実施した経験内容をデータテーブル内に保存した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元キャプチャーデバイスの設置およびデジタルビデオカメラの複数設置を実施し、3次元キャプチャーデバイスからのスケルトン軌跡の計測方法を確立し、学習者の作業のデータベース化を行うためのプラットフォームの構築は達成している。また、経験価値の該当項目、共創の該当項目の定義も行い、経験価値項目をアンケートにより入手した。ただし、得られたデータより技能者素養の向上要因を解析するという研究目標については、有効な手段を模索している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、A)経験価値の項目と見える化の検討、B)共創の項目検証とメカニズム分析、C)技能者素養の向上要因の解析、D)共創的ものづくり教育プラットフォーム運用法検討、から構成されており、D)のプラットフォームの構築とA)およびB)の検討とともにC)の検討に入っている。今後の大きな課題は、C)で得られたデータより技能者素養の向上要因を解析することであるが、同時にA)、B)、D)の再検討も行っていく。C)については、26年度より共分散構造分析の導入を検討しており、この解析手法を用いることにより、技能者素養の向上要因の抽出が可能であると考えている。また、取得できる学習者の実験データが1年間で2サイクルと限定されているため、他の作業データ取得方法の検討、観測方法の改善の検討、経験価値および共創項目の確認も行っていく。特に、共創はコミュニケーションを基に生じることが前提であるため、コミュニケーション不適合による場合の共創効果も考慮し、そのための対策も考慮するべきであると考えている。例えば、無理に参加を促すのでなく、適合している学生の所属するグループ同士の議論に変えるなど、コミュニケーションの形態を現場で変更して、全体として少なくとも複数のコミュニケーションの場が生じるようにすることを考慮する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究結果に基づき、データ収集するものづくり教育の実験環境として、これまでの個人の行動の観察環境に加えて、3Dプリンタを利用した物体の製作により個人のデザイン感の表現方法の検討をする準備をしていたが、物体の製作の前段階での設計に予想以上の時間がかかり、製作のための消耗品の発注が遅れてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品消耗品費に繰り越して使用する。27年度の直接経費は、物品等902,174円、旅費250,000円、人件費・謝金250,000円、その他100,000円、計1,502,174円となる。
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