本研究の目的は、ものづくり教育の質の向上を図るために共創が生じるメカニズムを見出すことである。本研究では、ものづくり教育授業を受ける学生を対象とし、各学習者の経験を持ち寄った共創(他者と連携してよりよいモノを作り出そうとする行為)により、1)チームとしてのものづくりの完成度、2)各学習者の感動や満足感と他人の感動や満足感の共有、についての関連を見える化し、共創をより促すプラットフォームを構築する。 学内で実施された3年次生向けの工学実験科目を対象とした。この実験は、5~6人チームでのロボット開発と製作したロボットによる競技会で構成されており、学修の到達目標は、全15回の授業を通して機構製作、電気回路製作、マイコンプログラミングの学修要素からなるロボットを協働で制作する力を修得することである。この学修課程において、経験価値に基づく共創行為の抽出とその制作物の完成度および学生の学修の満足度の関係の見える化を行った。 最終年度では、平成27年度までに構築した教育プラットフォームを用いて取得するデータ数を増やし評価の妥当性を検討し、このような学修に適切なものづくりテーマについて検討した。経験価値を相互交換する機会である共創項目として、会話共有、実験作業、単独作業に着目し、年度の異なる10グループのそれぞれ10回の授業の映像データを分析し、各共創項目の割合を計測した。その結果を重回帰分析手法により見える化したところ、会話共有ならびに実験作業項目とのバランスが良いチームの制作物の完成度が高いことが分かり、また会話共有の多いチームの心理的満足度が高いことが分かった。この結果より、離れた部屋で作業を行っているチームに相互に描画データを交換し会話を促すシステムをプラットフォームに新たに構築するとともに、会話共有と実験作業を促進するような新しいものづくり実験テーマについて試作・検討を行った。
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