研究課題/領域番号 |
26350250
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
地下 まゆみ 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (20406804)
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研究分担者 |
井上 美智子 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (80269919)
冨永 美香 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (90624007)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食育 / 環境教育 / 栽培 / 保育 |
研究実績の概要 |
「食」とは、単に人間個人の中で完結されてしまうのではなく、食すものは自然環境の中で生産され、流通、販売、調理され、体より不要物は排出され自然環境に戻るという循環性があり、地域や環境も含めたさまざまなつながりと広がりをもった行動である。日本では、保育園や幼稚園にて野菜の栽培活動はよく行われてきたし、食育基本法以降取れた収穫物を子どもたちが調理して食べるという食育活動もよく実践されるようになっている。この従来行われてきた食育活動を環境教育実践として発展させるための課題を明らかにし、その具体的な実践方法及び評価観点を提案することを目的として、本年度は環境教育として栽培と食育を連携させる実践園での参与観察による実態調査を行った。 栽培と食育を連携した活動を行っている幼稚園にて「保育所における食育に関する指針」に示されている食育の項目5つを考慮した食育活動に参与観察した。親子でのクッキング活動ではアンケート調査を実施し、子どもたちだけで行うクッキング活動の必要性が明らかになったとともに、友だちとともに味覚を知ることを楽しみ、食に興味を持つ子どもの姿から栽培から食事という一連の食育活動を通して5つの項目のひとつである「いのちの育ちと食」の目的を主とした活動に関係すること示した。また、海外の事例としてオーストラリアにおける栽培活動の食育を実践する州立学校に視察に行き、環境教育実践としてどのような点が意識されているかを調査した。その結果、地域資源の活用、地域との交流、他の環境教育実践との連携、多文化共生を意識した取り組みなどが進んだ点として抽出できた。今後、日本での現場の観察をする際に、それらの観点が導入されているのかどうかも併せて評価をしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である本年度は保育所・幼稚園・認定こども園での食育活動の実態を知るために質問紙調査を行うとともに、環境教育に関連付けた栽培活動と食育活動の連携活動の実態を参与観察する計画であった。そのうち、参与観察については当初の予定通り実施したが、実施予定としていた3都府県の保育所・幼稚園・認定こども園対象に行う質問紙調査については、質問紙作成から郵送準備作業を進めたが、12月発送、2月末までの返送という当初の実施計画を変更した。平成27年度4月「子ども・子育て支援新制度」の開始に伴い、各園は新制度に移行する園、従来のままの園、新たに新制度下で認定こども園になる園など多様な状況下にあることと、新制度移行に伴う省庁からの新制度への移行手続きの発表が非常に遅れたため、現場がその対応に翻弄された現実があった。各保育現場とも新制度移行に伴う多種多様な事務手続きに追われており、その時期に調査を実施しても当初予想しただけの回収は見込めないと判断した。そこで、回収率を確保するために1年実施時期をずらし、平成27年度に実施することとした。また、環境教育に関連付けた栽培活動と食育活動の連携活動の実践を立案する予定ではあったが、初年度の観察開始が遅れたため年間を通した実践の観察ができなかたため平成26年度は情報収集を中心とした観察を行い、平成27年度は立案時期から実施園と連携し、モデル計画の立案を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
保育における栽培活動及び食育活動の研究報告は海外ではほとんどなく、日本は両活動の実践実績において進んでいるといえる。一方で海外に比べて日本は環境教育という観点をふまえた調査や報告は少なく、環境教育という観点を意識した自然体験は多くない。日本の保育においては自然体験活動として栽培を行い、収穫物を調理し、食べるという取り組みを実践する園も少なからずあるが、自ら栽培した収穫物を使った調理や食事をもって環境教育を実践していると評価できるかは検討されていない。従来からの保育のねらい・内容に基づいた実践を、持続可能性のための教育をめざす環境教育であると判断し評価することはできない。つまり、環境教育としての新たなねらいや評価観点が必要であると考える。 これまで、栽培から食事までの活動実践に関して実態把握を行っているが、食育の目的を「食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現すること」とし、「調理体験」「バランスの良い食事の理解」「好き嫌いの改善」「食事マナーの修得」などを目的とした実践となっており、環境教育につながると考えられる目的は認められていない。この栽培から食事の一連の活動実践の中に環境教育の観点を加え発展させるための課題を明らかにするためには、食育活動のねらいや内容に環境教育的観点が認められるのかどうかの実態を把握する必要がある。その上で、保育現場で実現可能な具体的な実践方法及び評価の観点を提案することを目的として研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、実施園での食育活動の実態調査を今年度行った結果をふまえ、計画を若干修正しながら研究を進めることとした。実態調査を行うにあたり、同一園の複数回の訪問が必要であるため、研究代表者及び分担者の所属施設に近隣に位置している食育活動実施園での観察とし、また、平成26年度は近隣地域に位置している園の参与観察を行い、平成27年度以降に訪問園の地域を拡大することとした。質問紙調査の実施時期についても平成27年度に変更した。具体的には大阪府・兵庫県・東京都の保育所・幼稚園・認定こども園約2400件を対象に質問紙調査を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
実態調査を行うにあたり、平成26年度は近隣地域に位置している園の参与観察を行い、平成27年度以降に訪問園の地域を拡大することとし、国内外への環境教育の実態調査の必要性が生じたため、その旅費を平成27年度使用として再計上するとともに学会発表の旅費も合わせて計画をしている。また、質問紙調査の実施時期を平成27年度に変更したため、昨年度計上した調査経費がそのまま平成27年度分へと移行した。内訳としては、大阪府・兵庫県・東京都の保育所・幼稚園・認定こども園約2400件を対象に質問紙調査を実施する際の調査紙の印刷代、送付データの集計補助として必要な謝金、送付封筒・印刷代および郵送料を平成27年度に使用予定である。
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