幼児期の保育・教育現場においては、野菜の栽培活動や育てた食材を用いたクッキング活動が実施されている。大阪府・兵庫県・東京都における保育所・幼稚園・認定こども園約2400件を対象に質問紙調査を実施した結果、回答者のほぼすべての施設において、園庭等を利用した植物栽培が行われ、約8割の施設ではキュウリ・ナス・プチトマト・ピーマン等の野菜の栽培活動を実施していた。しかし、多くの施設では夏野菜の栽培・収穫といった春から夏に限定した活動にとどまり、環境教育のねらいとなる雨水タンクの利用やたい肥つくりはほとんど実施されていないことが明らかとなった。さらに、栽培と食育を連携した活動を行っている幼稚園にて食育の5項目のうち,「いのちの育ちと食」および「料理と食」の連携を目的とし食育活動を実施した。その結果、子どもが疑問や不思議に感じた事柄について自ら探究し答えを導き出すための自発的な活動につなげるためには保育者の意識が必要であることが示された。調査の結果、保育現場において栽培活動・食育活動の両方は比較的導入されているが、環境教育のねらいを全体に組み込んで実践している園はほとんどないことが明らかとなった。従来型の食育活動や栽培活動を環境教育実践として発展させるための課題として、保育者の環境教育に関する意識や環境構成の充実が必要である。既存の食育・栽培活動を活用して環境教育の実践へと発展させるため、子どもたちが土、植物(種子や苗)、水、たい肥を準備し、植物の成長を観察し、収穫・調理するといった連続的な活動を実施することにより、子どもは五感を駆使し、自然の恩恵に感謝し、自然の循環を主体的に気づくことができる。多くの施設で実施されている既存の栽培・食育活動の実践に保育者が環境教育を意識しながら新たなねらいを加えることで、自然体験・食育・環境教育の全ての観点を含む総合的な活動へと発展すると考える。
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