研究課題/領域番号 |
26350257
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大西 淳 津山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60311073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 組み込み |
研究実績の概要 |
申請時,研究課題の研究期間である3年間全体の研究目標は,組み込み分野を対象として,プログラミングの入門レベルから製品開発ができるレベルまで一貫して組み込みソフトウェア技術を学ぶことができる教材群を開発することであった。教育教材の対象は,工学系教育機関の情報系学科において専門教育を受け始めたばかりの学生を想定しており,ハードウェアと組み込みプログラミングの両方の基礎を効率よく学べる初学者向け教材を開発したいと考えていた。また,教材開発には,教育用自転車ロボットの開発と,自転車ロボットを活用して組み込みソフトウェア技術を習得できるプログラミング課題の作成やテキストの作成,および,自転車ロボット教材に取り組む前に基礎事項をマスターするための,初学者用の教材開発が含まれていた。 上記の全体の研究目標に対する平成27年度の目標は,完成に向けて自転車ロボットの試作を進めることであった。これに対しては,昨年度の実施状況報告書で報告したとおり,研究協力者の努力により平成26年度中にほぼ完成していたものが,平成27年度には製品化の段階まで進み,平成28年度中に市販が開始される見込みとなった。 一方,プログラミング課題,テキスト,および,初学者用教材の作成・開発については,これも昨年度の実施状況報告書で報告したとおり,平成26年度にレゴロボットを活用する方針で進めることにしていた。これに対し,平成27年度は,プログラミング課題に関し,具体的な課題群を作成する代わりに,レゴロボットを活用して行われている既存の各種技術コンテストにレベルをあげながら順次チャレンジさせ,最終的に本課題で開発した自転車ロボットを活用する競技にチャレンジさせるという教育課程を考案し,その教育効果の一部評価を行った。その結果,この教育過程に関わった学生の反応は良好であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標の一つは,完成に向けて自転車ロボットの試作を進めることであった。これに対しては,上記概要にも記したとおり,研究協力者の努力で平成26年度中にほぼ完成していたものが,平成27年度には製品化の段階まで進み,平成28年度中に市販が開始される見込みとなった。そのため,自転車ロボットの試作に関する平成27年度の目標は達成されたと判断した。 もう一つの目標であるプログラミング課題,テキスト,および,初学者用教材の作成・開発に関しては,レゴロボットを活用する方針で推進することを平成27年度の目標に掲げていた。これに対し,プログラミング課題に関して,具体的な課題群を作成するかわりに,レゴロボットを活用する既存の各種技術コンテストにレベルをあげながら順次チャレンジさせ,最終的に本課題で開発した自転車ロボットを活用する競技にチャレンジさせるという教育課程を平成27年度に考案した。具体的には次のような過程である。まず,競技課題の困難度が比較的低いSMARTというコンテストに参加させ,その取り組みを通じて開発環境やロボット制御プログラムの基礎を学ばせる。次に,その経験を活かして,課題が要求する技術レベルおよびライバルとなる他の参加者の技術レベルが高いETロボコンに参加させて,これまでに学んだ内容を復習・充実させ,新たにソフトウェア設計について学ばせる。最後に,自転車ロボットを活用した製品開発レベルの技術修得を目指すコンテストにチャレンジさせる。この教育課程は,平成26年度に本研究課題の成果の一つとして発表した論文で明らかにした,成功体験が次の新たな学習に対する意欲につながる,という原理に基づいて考案したものである。平成27年度は,数名の学生をSMARTに参加させた後にアンケートをとり,参加経験が次の学習意欲につながる可能性があることを確認した。以上のように,順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
自転車ロボットは市販できるまでになったため,今後は,プログラミング課題,テキスト,および,初学者用教材の作成・開発を推進することになる。このうち,プログラミング課題については,進捗状況で報告したとおり,課題群を開発するかわりに外部コンテストを活用する教育課程を考案し,その具体化や考察を進めることに決定した。この決定は,平成26年度に本研究の成果の一部として発表した論文の内容だけでなく,本研究課題の取り組みを通じて,教育機関内に閉じた教育活動より,外部と交流する機会がある教育活動のほうが学習効率が高いと確信したことを根拠とするものである。 また,テキストおよび初学者用教材の作成・開発に関しては,本研究課題オリジナルなものは開発しないことに決定した。理由は,学習者が必要とするであろう内容を予め想定して,そのためのテキストや教材を作って提供することは,学習者の可能性や深い学習を妨げることになるということに気付いたためである。アクティブラーニングの考えを導入し,学習者が必要とすることを,学習者自身の努力と工夫で学ばせることが,学習効果を高めることにつながると考えるようになった。これは,本研究課題の取り組みを通じて理解したことである。そのため,テキストおよび初学者用教材を作成・開発するかわりに,コンテストで必要になる特殊な情報や入手が困難な情報について,これらを揃えたり,入手方法をまとめたりすることで,学習者が必要としたときに,それに応えられる環境を整備することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に計画していたOS移植をペンディングしたことと,自転車ロボットの完成に研究協力者が費用負担の面でも努力頂いたことにより,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
完成した自転車ロボットの入手に使用し,この自転車ロボットを活用する技術コンテストとして実施可能な競技課題の内容を考案する。また,レゴを活用した外部コンテストにも参加し,継続して技術動向を探り,また,そこへの参加が教育効果へどのように影響するのかを評価するために使用する。
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