申請時,3年間の研究期間全体の目標は,組み込み分野を対象として,プログラミングの入門レベルから製品開発ができるレベルまで一貫してソフトウェア技術を学ぶことができる教材群を開発することとしていた。教育教材の対象は,工学系教育機関の情報系学科において専門教育を受け始めたばかりの学生を想定しており,ハードウェアと組み込みプログラミングの両方の基礎を効率よく学べる初学者向け教材を開発したいと考えていた。そして,教材開発には,教育用自転車ロボットの開発と,自転車ロボットを活用して組み込みソフトウェア技術を習得できるプログラミング課題の作成やテキストの作成,および,自転車ロボット教材に取り組む前に基礎事項をマスターするための,初学者用教材開発が含まれていた。 上記の全体の研究目標に対し,教育用自転車ロボット開発は順調に進んで平成28年度に市販化に至った。そして,初学者用教材については,レゴロボットを活用する既存の各種技術コンテストを代用することが教育効果の面から見ても効果が高いと平成27年度までの研究で結論した。また,残る自転車ロボットを活用する教育に関しても,いわゆる実験手引き書のような,手順に従って作業を続けることで一定の技量を身につけさせる課題群を開発するよりも,一定レベルの最終的技術課題のみを与え,試行錯誤による課題解決の過程で必要になる情報やツールを充実させることのほうが,アクティブラーニングと同様に教育効果が高いという結論にも達していた。 以上のような研究成果のもと,平成28年度は,学習者が自転車ロボットを使って解決する技術課題の考案と,その課題解決に必要なツールの洗い出しを行った。その結果,直進性能を向上させるといった,一見単純な技術課題であってもそれなりの難易度になることと,性能チューニングのために自転車の走行履歴をロギングするツールが必要であることがわかった。
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