研究課題/領域番号 |
26350259
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
二宮 純子 大分工業高等専門学校, 一般科理系, 准教授 (60632726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発光細菌 / フィブロイン / 固定化担持膜 / 毒性試験 / 実験教材 |
研究実績の概要 |
本研究では、蚕繭からフィブロインを抽出し、塩化カルシウム溶液で加水分解することにより得たフィブロイン溶液にグリセロールを添加し、不溶性フィブロイン膜(以下「IFF」という)を作製した。IFFを接着させたガラスチューブに海洋性発光細菌V.fischeriの培養液を加え、一定時間経過後、IFFに付着していないV.fischeriの洗浄除去を行い、IFFへの発光細菌の固定の評価を行った。また、IFFに付着したV.fischeriがPolysaccharaideを分泌することが確認されているため、IFFに多糖であるアルギン酸を添加したIFFを作製した。アルギン酸を添加したIFFを水溶液に浸漬した場合、タンパク質であるフィブロインは溶出しないが、膜自体が溶液中で脆弱化することが明らかとなった。現在、IFFに比べさらに細菌の付着率が高く、発光量を増大する担持膜の改良を試みている。 発光細菌の重金属に対する毒性試験では、海洋性発光細菌であるVibrio fischeri、および淡水性発光細菌であるPhotorhabdus luminescensを供試生物として、各種重金属に対する感受性の検討を行った。V. fischeriを供試生物とした場合は、水銀Hg濃度5.0mg/L以上で発光阻害率がほぼ100%であった。さらに、他の金属混合条件下においても発光阻害率を示し、水銀Hgに対して高い感受性を有することが明らかとなった。一方、淡水性発光細菌P. luminescensを供試生物とした場合は水銀HgとカドミウムCdに対して金属濃度5.0mg/L以上で発光阻害率が90%以上の結果を示した。海水性と淡水性の発光細菌では、それぞれ毒性を示す毒物の種類と発光阻害率が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、簡便性・迅速性を有した微生物実験の教材化である。発光細菌を不溶性フィブロイン膜(IFF)に固定化することで、細菌の前培養を短縮化できると考えている。今年度、発光細菌の担持膜であるIFFに多糖の一種であるアルギン酸を添加した膜を作製した。アルギン酸を加えた場合、IFFの水へのタンパク質の溶出はほとんど見られなかったが、水溶液に対してIFFが脆弱化することが明らかになった。今後は、IFFに付着した発光細菌が再び発光するまでの培養時間と発光量について検討を行う予定である。 また、発光細菌の重金属に対する毒性試験では、海洋性発光細菌であるVibrio fischeri、および淡水性発光細菌であるPhotorhabdus luminescensを供試生物として、各種重金属(Hg,Cd,Cr)に対する感受性の検討を行った。その結果、海水性発光細菌V. fischeriではHgに対して、淡水性発光細菌P. luminescensではHgとCdに対してそれぞれ金属濃度5.0mg/L以上で発光阻害率が90%以上の結果を示した。海水性と淡水性の発光細菌では、毒性を示す重金属の種類と発光阻害率が異なることが示唆された。 平成25年3月に環境基本法に基づく水質汚濁にかかる生活環境の保全に関する環境基準のうち、水生生物の保全に係る環境基準の項目に直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(以下「LAS]という)が追加された。そこで、海水性発光細菌V. fischeriの培養液にLASを添加した場合、発光率が増加する結果が得られた。この結果から、IFFに固定化した発光細菌を用いた微生物実験は、生活排水に含まれるLASに対するバイオアッセイの教材化として今後さらに期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
発光細菌の担持膜の固定化担体である不溶性フィブロイン膜(IFF)にアルギン酸を添加した場合、菌の付着数と発光量にどのような影響があるのかを明らかにする。また、発光細菌が付着した担持膜のSEM画像を撮影し、膜への付着状況と菌の形状について調べる。また、フィブロイン膜を理科教材として展開する試みとして、小中学生を対象にした公開実験で「フィブロイン膜」を用いた実験を実施する予定である。 毒性試験では、発光細菌の消光反応を利用したバイオアッセイが主流であるが、本研究では、海洋性発光細菌V.fischeriのLASに対して、発光量が高くなることを利用し、LAS濃度に対する発光増加率を求め、夾雑物が混在した状況における発光量の挙動について調べる。生活排水などが混入する河川水などの環境水を試料として用い、発光細菌を用いた毒性試験の実用化に向けた試みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロプレートリーダー(ルミノメータ)の購入の為、前倒し支払い(20万円)請求をしたが、培地試薬などは消費期限があるため購入を控え、次年度使用としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度からは高額の装置購入はないため、予算を計画通り執行できる。
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