研究課題/領域番号 |
26350259
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
二宮 純子 大分工業高等専門学校, 一般科理系, 准教授 (60632726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発光細菌 / フィブロイン / 固定化担持膜 / 毒性試験 / 実験教材 |
研究実績の概要 |
発光細菌Vibrio fischeri(以下,V.fischeri)(ATCC49387)はグラム陰性桿菌で,青緑色の光を発する.その発光量の変化を指標に,環境中の毒物センサーの供試生物として用いられている.平成25年,環境基本法の基準に界面活性剤の一種である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩(LAS)が追加された.本研究では,V.fischeriにLASならびに市販洗濯洗剤を曝露させ,発光量の変化から水質汚染の評価方法について検討を行った.また,比較対象として淡水性発光細菌Photorhabdus luminescens(以下,P.luminescens)にも同様の実験を行った. 発光細菌の培養液にLASを曝露したところ,LAS濃度0.05mg/L以上に対して発光が増加し,濃度が高いほど発光量が増加する傾向があることが確認できた.さらに,LASを含む市販の洗濯洗剤に対しても発光増加が確認された.市販の洗剤には,LAS以外の化学物質が含まれているが,そのような夾雑な条件下においてもLASの感受性を確認できたことは重要である.P.luminescensはLAS,市販洗剤のどちらに対しても発光阻害を示した. また,フィブロインにアルギン酸塩を添加して作製した膜を用いて,海洋性発光細菌V.fischeriの固定化を行った.発光細菌を固定化した膜は-80℃で,30日間冷凍保存し,その間における発光細菌の発光量と生菌数を求めた.フィブロイン-アルギン酸膜に固定化したV. fischeriの発光強度が高い値を示し,菌数の付着率も高い結果が得られた.また,凍結保存したストックを解凍した後についても,細菌の回収率が向上したことから,フィブロイン-アルギン酸膜は,V. fischeriの保存環境として有効であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、発光細菌の固定化担体である不溶性フィブロインフィルムにアルギン酸を添加した場合、発光細菌の付着率が有意であることが明らかとなった。保存方法について、超低温(-80℃)では保存化が可能であるが、家電製品の冷凍庫(-20℃)での長期保存は実現していないため、培地条件などの保存条件を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
一般に、発光細菌を用いたバイオアッセイは発光阻害を用いた毒性評価を行う。硫黄S源要求性を示すV.fischeriは、界面活性剤LAS(直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩)に対して発光増加を示すことを利用した、水質評価を行うことで、特定の化学物質に対するバイオアッセイが可能となる。本研究で開発した固定化発光細菌を用いて、試験的な模擬授業を実施し、その有意性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品(培地、繭玉など)は、経年劣化するため在庫の物品を優先に使用し、新規購入を控えたため予算を使用していない。 また、学会誌投稿論文は現在(平成28年3月)執筆中のため、まだ経費が発生していない。
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次年度使用額の使用計画 |
既存の熱風低温乾燥器が故障したため、新規購入しなければならない。その他は、予算を計画通り執行できる。
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