物理・化学・生物分野の学習内容の理解において、実験は重要な役割を担っているが、天文分野においては、観察・観測がそれに対応する。本科研費では、近年急速な性能の発達を遂げたデジタルカメラを利用して、以前は難しかったさまざまな天体を精度よく観測し学習できるプログラムの開発を目指す。専門的な機材や知識を必要とすることなく、学校教員・生徒や一般市民の誰もが自分自身で観測を行い、宇宙に関する知識を実感として身につけることができる学習プログラムを開発する。 最終年度となる今年度は、これまで行ってきた(本研究で当初予定していた)太陽系天体プログラム(対象は月、惑星、ガリレオ衛星、彗星、太陽)、恒星・銀河プログラム(対象は変光星、散開星団、星雲、系外銀河)に加えて、スペクトルに関するプログラムの開発にも着手した。さまざまなデジタルカメラのRAW画像を同じ方法で読み込み、天体画像データの解析を行っている活動団体、星空公団と連携してソフトウェアの改良を行い、開発プログラムのテストを学校教員を含む研究協力者とともに行った。これらの作業は、電子メールやネットワーク会議システム等を活用しつつ、適宜会合を開いて進められた。学校教員の研究協力者が多いため、学校の夏休み期間中に合宿も開催して作業を行った。10月には地学教育学会の全国大会でプログラムの実習を含めたワークショップを行い、1月には国立天文台を会場に学校教員や天文普及活動を行っている市民を対象とした最後のワークショップを開催した。開発プログラムの実習や今後の開発に向けた検討を行い、その内容は集録を作成して広く配布するとともに、インターネットでも公開を行っている。本研究によって、学習者が自ら天体の撮影を行い、定量的に科学的な探究を行うプログラムを開拓することができた。これらは学校関係者だけでなく、一般市民の関心も大きく呼び起こしている。
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