研究実績の概要 |
平成26年度は、(1)先行事例の調査分析及び(2)専門家及び非専門家を対象にしたインターネット調査を実施した。(1)先行事例の調査分析:文献調査において、医療分野だけでなく、環境・防災・土木等の多くの分野で「人々が知りたいことを専門家が把握できていない状態」であることが示された。また、医師は患者の医療用語の認知度を高く見積もる傾向(吉田他,日本衛生学雑誌,68(2), 126-137, 2013)がある一方で、「健康に関する世論調査(NHK放送文化研究所, 2009)」及び「健康に関する情報収集に関するアンケート調査(MyVoice , 2013)」等の調査より、非専門家は専門家の発する情報に高い信頼を置いていることが示された。このことから、専門家と非専門家は互いをやや過剰に信頼するあまり、互いの理解の程度を確認し合うことをしていない/思いつかない状態であることが示唆された。また、「薬育及び薬の適正使用に関するアンケート調査(大分県南部保健所, 2013)」において、医療従事者と一般の回答者で回答傾向に違いがあることが示された。これらの先行事例から専門家と非専門家の間には“認識上で”ギャップが存在することが示され、ギャップの要因として「相互の過剰な信頼(非専門家の専門性への畏怖、専門家の非専門性への尊重)」・「視座の違い」が考えられた。(2)インターネット調査:(1)で得られたギャップについて医薬品情報でも同様なことが言えるのか検証するために、インターネット調査を実施(2014年11月)し、専門家(医療従事者)110名を含む1090名の回答を得た。専門家と非専門家の回答傾向を比較分析したところ同様なギャップが観察され、現在、詳細な分析を実施中である。
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