研究課題/領域番号 |
26350263
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研究機関 | 国立研究開発法人科学技術振興機構 |
研究代表者 |
伊藤 裕子 国立研究開発法人科学技術振興機構, 社会技術研究開発センター, フェロー (20360711)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 科学技術コミュニケーション / 意思決定 |
研究実績の概要 |
平成27年度は「医薬品情報における専門家と非専門家のギャップの本質は何か」を明らかにする目的で調査分析を実施した。 その結果、次の(1)-(5)が示された。(1)専門家と非専門家の情報収集行動には違いがある:両者とも情報収集ツールとしてもっとも多く利用したものはインターネットであったが、専門家は専門性の高いサイトから情報を得ていた。(2)非専門家は自己批判的である:多くの専門家は非専門家に対して情報を適切に伝えられなかった経験があり、その原因は自分が知らなかったことであると回答したが、非専門家は専門家から自分が知りたい情報を得られなかったのは「相手が知らなかったのではなく、自分に原因があった」と考えていた。(3)分野により非専門家の自己批判的な傾向は変わる:医薬品ほど高い専門知識が必要ではないと考えられる健康食品では、医薬品に比べて、非専門家の自己批判的な傾向は弱いことが示された。(4)非専門家の自己批判的な傾向の原因は国民性の可能性がある:現在分析中であるが、中国都市部(北京市及び上海市在住)の非専門家には、医薬品情報収集に関して、日本の非専門家のような強い自己批判的な傾向は示されなかった。(5)専門家の判断の傾向は専門度の高低で変わらない:文部科学省科学技術・学術政策研究所が実施した第10回科学技術予測調査(2013)の自由記述部分を分析したところ、ライフサイエンス分野を含めた全分野の専門家において専門度の高低の違いによる認識・判断に差がないことが示された。 以上より、専門家が身につけた行動様式が専門家と非専門家のギャップに起因すると推測され、このことから非専門家が知識のみを身につけてもギャップの解消には繋がらないが、非専門家が適切な知識を持つことは専門家に対する畏怖等により自己批判的になる傾向を弱くすることに繋がると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に想定していなかった所属機関の異動(他機関への出向)が平成27年4月にあり、研究環境の違いなどから年度前半の研究計画に遅れが生じたが、後半にはほぼ遅れを取り戻した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は「ギャップ解消に必要なことは何か」を明らかにし、それに資する医薬品情報の独習教材や学習システムについて検討する。さらに、9月にドイツで開催される医療分野のコミュニケーションに関する国際的な学術会合(EACH conference)に参加してポスター発表を行い、関連の研究者と意見交換を実施すると共に、非専門家向けの医薬品情報提供システムで先進的である欧米の動向を調査する。調査結果は医薬品情報の独習教材や学習システムの検討において活用する。
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