研究課題
2016年5月までの間に9回にわたり地域の市民,行政,研究者が共に発掘を重ね,層序・堆積学などに関する地質学的な調査や,珪藻,花粉,植物,貝,昆虫,脊椎動物,足跡などの化石についての古生物学的調査を実施した.この結果,火山灰層序学の研究からは発掘地域の年代が180-190万年前であること,堆積学および古生物学の研究からは当時の水域の変遷が,また古生物学の研究から古気候や植生の状態が判明したほか,この地域でこれまで発見されていなかった各種の化石の発見があった.このことから,地球科学的視点から,地球規模で起こった気候変動の変換点の時代に日本列島の中央部に位置する琵琶湖地域において気候や動植物相の古環境がどのような状態であったのかを知ることができた.こうした成果は,琵琶湖博物館の市民参加制度を活用した地域の人たちと,行政,博物館の研究者が一体となって行ったことで得られた.このような成果を上げるために,まったく知識のなかった市民は,室内や野外での専門的な学習会を博物館の学芸員と共に繰り返し,また,発掘現場での作業,発掘資料の整理や研究などの実践を通じて,自然を記載する能力を向上させると共に,その結果を研究会や報告書で発信することまでできるようになった.地域にこうした人々が増えることによって,人々が自らの住む場所の自然や文化に関心を持ち,それを保全し,再生するような活動が生まれる.本研究によって成長した市民は,さらに新たに加わってくる市民を指導しながら持続的な地域の文化振興を担う人を育てる循環的活動が続けている.
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