研究課題/領域番号 |
26350280
|
研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
松田 浩一 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (70325926)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 郷土芸能伝承 / 可視化 / 筋電位センサ / 技能 |
研究実績の概要 |
指導内容が伝わりにくい和太鼓技能の一つに,「脱力」と呼ばれるものがある.脱力とは,「バチを太鼓の面に当てる(以下,インパクト)」直前に,腕の力を抜く技能である.インパクトの時間が短ければ短いほど響きの良い音が出ることは理論的に分かっている.この脱力をすることで,インパクトの時間を短くできることが経験的に分かっているため,和太鼓において重要な技能であると言える.本研究では,演奏者が実際に使っている力に着目し,それを定量的に捉えることで和太鼓の脱力技能を可視化する. 脱力とは和太鼓演奏中の「力の抜き」であり,演奏者が加えている力の量が分かれば脱力を可視化できると考えた.その力の量を捉えるために,本研究では筋の活動状態を知る方法として用いられる筋電図法に着目した.この筋電図法を用いて和太鼓演奏者の筋電位を計測することで,筋電位から脱力技能を可視化できるのではないかと考えた. 指導者の方へのヒアリングから分かった「理想の脱力の流れ」と筋電位波形を同期させて比較を行ったところ,指導者の筋電位波形を見ると,手首の返し始めで筋電位波形が上昇していることが分かった.これは手首の返し始めで指導者の力が入っていることを意味し,理想の脱力の流れと一致する.また,インパクトの直前から筋電位波形が大きく下降していることが分かった.これは,インパクトの直前で力が抜けていることを意味し,理想の脱力の流れと一致する.この結果から,脱力の重要なポイントである2点と筋電位波形の結果が一致し,筋電位から脱力技能の有無を確認できた. 同様の方法で,上級者,中級者,初級者に対して実験を行ったところ,レベルが上がれば上がるほど,指導者の傾向に似た筋電位波形の現れる比率が高くなるという結果が得られ,これは,指導者による学習者のレベルの主観評価と一致することが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技能を可視化するという目的に対して,和太鼓における脱力という技能を筋電位を用いることで直接的に測定できる可能性が示唆されたため.
|
今後の研究の推進方策 |
和太鼓における脱力技能の可視化は,学習者へのフィードバックによってその効果を発揮する.筋電位センサを用いた技能の可視化によってフィードバックが可能となるが,筋電位センサは,使用時の制約・設置の手間が障害となり,日常的に使うことは困難である. 今後は,モーションセンサを併用し,脱力技能を判定可能なアルゴリズムの開発に取り組む.
|