「研究の目的」現在の言語聴覚士養成教育は厚生労働省の定める言語聴覚士学校養成所指定規則(平成10年制定)で規定されている。この内容は学習すべき科目と単位数の指定しかなく、具体的な教育内容は教員の裁量に任されているため、養成校による教育レベルに差が生じている。その結果、国家試験合格率、臨床実習指導における到達レベルの決定等、養成教育上の問題が生じている。また、社会状況の変化や学生の質の低下など、平成10年に制定された教育内容で対応できているとはいいがたい状況があり見直しが必要である。そのために、教育ガイドラインを設定し教育内容の根本となるモデル・コア・カリキュラム(以下コア・カリ)の作成が必要である。本研究は言語聴覚士養成教育の指針となる教育ガイドラインとコア・カリを作成し、多くの言語聴覚士の意見を反映させて構築することである。 「研究実施計画」研究1年目には計画通り、言語聴覚士養成教育の問題点を明らかにするために、養成校教員と現役の言語聴覚士にアンケートを実施した。その結果、教育ガイドラインに必要な内容を把握できた。研究2年目には予定通り、教育ガイドラインとコア・カリの骨子である教育内容の枠組みを作成し、学会で発表し現役の言語聴覚士の意見を徴収し修正を加えた。研究3年目にはコア・カリの細目を決定し、具体的な教育目標と到達目標を作成する予定であった。しかし、基礎専門領域の科目別教育目標と到達目標が試案どまりで完成まで至らなかった。 平成24年に発足した一般社団法人日本言語聴覚士協会の「言語聴覚士養成教育モデル・コア・カリキュラム」諮問委員会を、平成26年から28年まで3年間でのべ18回開催した。今後、言語聴覚士の意見を反映しつつ、基礎専門領域のコア・カリを完成させ、また、全科目のカリキュラム例を作成し、現実的に実施可能かを検討する必要が課題として残った。
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