研究課題/領域番号 |
26350288
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永岡 慶三 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (90127382)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゼミ活動支援 / SMS / プレゼンテーション / スピーチ / 相互評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,今後の大学教育を展望し, 10年間単位を想定して,先導的にゼミ活動支援の方式を提案する.具体的にはSMS:Seminar Management System統合ゼミ活動支援システムの開発とその効果の実証である. ゼミ活動における教育活動を,専門知識提供機能から人間関係構築・人間基礎力の育成機能を主眼として捉え直し,その集約的機能であるゼミ活動を効果的・効率的に支援するシステムの構築とゼミ活動の実践的方法論の開発を行った.特にプレゼンテーション能力,ファシリテーション能力の育成機能の増強に特に注力した.本ゼミの教育理念には,そうした能力のハウツー的な能力養成の目的でなく,基本的に相互評価を行うこと自律的に自らの能力を高める自己増殖的体質の醸成にある. ファシリテーション能力の評価値として参加者発言の空間的・時間的均等化をあげ,実用性を確認できた.またプレゼンテーション能力については共通評価項目に加え,プレゼンターが自ら改善を希望する個別評価項目を追加して,振り返り評価を行える機能を開発・試行した. 2016年度は主に次のような研究成果を学会論文誌に投稿及び研究会にて発表した.「共通レポートを用いた相互評価における他者評価の正確性と理解度との関係」,「統合ゼミ活動支援システムSMSの開発状況 (3)- 学生向けダッシュボード機能の開発」,「統合ゼミ活動支援システムにおけるファシリテーション能力育成の試み」,「統合ゼミ活動支援システムにおける個別評価項目を用いたスピーチ能力育成の試み」,「遠隔プレゼンテーションにおける挨拶が及ぼす内容理解の促進とプレゼンターに対する印象の違いの検証」
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度より統合ゼミ活動支援システムSMS:Seminar Management Systemの開発を構想し,システム構築を開始した.その設計理念としての「学生同士が自律的かつ対話的に高め合う態度を涵養すること」に基づき,開発と試行・改訂を繰り返すことで,実際のゼミ授業において実用性を検証している.また具体的かつ多様なゼミ活動の手段として,伝統的な専門書・研究論文の輪講,ワークショップ/即興スピーチ,オンライン・ディスカッション,テレビ会議システムによる他大学との同時双方向遠隔合同ゼミなどを試み,既にその成果を2015年度に引き続き,日本教育工学会論文誌(査読あり)に投稿し採択・刊行された.さらに日本教育工学会,電子情報通信学会などの各学会研究会に報告した.そこでも学外研究者との質疑を通して,示唆に富むアドバイスを得られた. 以上,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の究極的目標は,実社会の企業等の組織と大学ゼミとがSMSを共有し,そこに展開されるeポートフォリオ評価の利活用を通して,現在,大学生と企業等の組織の間で繰り広げられる就活という膨大なエネルギー消費の効率化を図ることにある.その実現には,社会制度的規則や慣習の見直し・変更を伴う幾多のハードルがあるであろうことから,そう簡単なものではないと思われる.しかし,現時点においてその視点を持ちつつ開発研究を進め,そうした未来を展望しつつ,研究レベルでの準備を行うことは,意味のある重要なことと考えている. 実際のゼミ活動の試行・評価として,来年度においても一層,スピーチ,プレゼンテーション,グループ・ディスカッションなど即戦力的方法の育成を目標に行う.また地頭力パズル演習などの多様なゼミ活動の手段開発も同時に行う.一方でまた.遠隔会議技術の進歩に伴い,複数大学のゼミと連携して,同時双方向遠隔合同ゼミ「バーチャル合同ゼミ」の実施も予定している.そこでは本来的な卒業研究指導の他にも,昨年度の「バスケット,サッカー,ゴルフ」以外に「ラクロス,ソフトボール」などといっそう多様な種目のスポーツ・体育実技指導も構想している.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表のため予定していた2016年度中に海外開催の国際学会への投稿が諸事情により間に合わなくなったため,年度内の発表を断念し,そのために用意していた海外出張旅費が2017年度への繰越金となった. また2016年度に当方ゼミの助手として共同研究を行っていた者が他大学への転勤となったため,研究分担者として研究分担金を2017年度に用意する必要が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度中に海外開催の国際学会への投稿を予定している.それに伴う海外出張費を使用する計画である.また2016年度まで助手であった者を研究分担者として加え,研究分担金を分担することとした.
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