本研究を含む進行中の研究プロジェクトの目的は、視覚障害学生が大学の講義を不自由なく受講できるシステムの構築である。この研究プロジェクトでは、視野狭窄者のためにカメラとHMD(Head Mounted Display)を用いて健常者の視野を提供する支援メガネを試作してきた。そこでは、カメラからの映像がHMD内で視野狭窄の状況に応じて縮小表示される。問題になったのは目の疲れであり、その原因は眼球を動かさずに小さな映像を凝視し続けることである。そこで、本研究では眼球運動に合わせてその視線の先に映像を表示しようとしている。HMDの内側の超小型カメラで眼球運動による視線の移動を検出し、映像の表示位置を視線の先に移動させることで、HMD装着者の疲労軽減を目指している。 平成28年度は、研究目標「【1】HMDの内側への超小型カメラの組み込み」、「【2】眼球運動の検出」、「【3】HMDでの映像の表示位置の変更」に向けた研究を継続した。 【1】HMDの内側への超小型カメラの組み込み:繰り越した研究費で組み込むのに適当なUSBカメラとHMDを入手し、平成27年度の経験を活かしハードウェアを製作した。 【2】眼球運動の検出:ハードウェアの製作と並行し、ソフトウェアも開発した。瞳の検出と視線方向の決定がこの項目の中心である。平成27年度の研究を発展させることで実現できた。その際、画像解析ソフトウェアの開発のために現有のデスクトップ型ワークステーションのハードウェアの増強した。また、利用者環境での実証実験のため、ノート型PCを導入した。【3】HMDでの映像の表示位置の変更:予定を前倒しして、平成27年度での結果を受け、本格的な進展となった。
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