研究課題/領域番号 |
26350306
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
野中 美津枝 茨城大学, 教育学部, 准教授 (90522029)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 授業デザイン / 学習活動 / 授業評価 / 家庭科 / 授業研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、生活課題解決能力を育成するための具体的なアクティビティ(学習活動)を中心にした授業デザインと授業評価を検討して、「授業デザインを基盤とする授業改善・創造モデル」を提案し、実証的に検証することを目的としている。 研究の初年(H26年)度に4県の高校家庭科教員に授業研究の実態について実施したアンケート調査を分析した結果、約7割の教員が学習活動を創造する段階で悩み,さらに学習活動を効果的に導入し支援して問題解決的な学習に展開していくといった授業デザインに課題があることが明らかになった。また、多忙で授業後省察する時間もなく、個人での授業研究が難しく,特に教員一人体制の学校では、校内の授業研究も困難な状況である。様々な学習活動を実施している教員ほど生徒の授業に対する意欲が高い。一方で,若い教員に体験学習や専門性の高い実験の実施率が低く,高校家庭科の授業時数の減少による教員自身の体験の少なさ,大学での専門科目の最低履修単位数削減による専門性の低さが示唆され,今後の家庭科教員養成における課題が浮かび上がってきた。 H27年度には、これまでコンサルテーションとしてかかわった小学生の消費者教育の授業について,児童のワークシートの記述内容から学習者の意思決定のプロセス,思考の変容を分析し,導入した「買い物シミュレーション」のアクティビティが適切だったかを評価した。そして、授業実践を再構成し,さらに消費生活課題解決能力を育成する授業デザインについて理論化を試みた。その結果、自分の買いたい品は、当事者の問題として買い物シミュレーションの活動を進める効果があること、問題解決における思考過程を可視化することによって批判的思考が育成されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度に実施した4都県の高校家庭科教員を対象とした授業研究の実態調査を分析した結果をH27年6月に日本家庭科教育学会に発表し、さらに論文にまとめて日本家庭科教育学会誌に投稿し、H28年8月発行の日本家庭科教育学会誌第59巻2号に掲載が決定している。 また、これまでの生活課題解決能力を育成するための授業研究のデータを再分析について、コンサルテーションとしてかかわった小学生の消費者教育の授業を分析し,授業実践を再構成し,さらに消費生活課題解決能力を育成する授業デザインについて理論化を試みた。その結果、生活課題解決能力を育成するための授業デザインモデルが確立でき、研究成果をH27年10月の日本消費者教育学会で発表し、論文にまとめ、日本消費者教育誌「消費者教育第36冊」に掲載予定である。 さらに、生活課題解決能力を育成するための「授業デザインを基盤とする授業改善・創造モデル」でアクションリサーチの実証研究については、H24年度まで勤務していた愛媛大学時代に授業の共同研究を進めた愛媛県の家庭科教員からの協力を得て、H27年9月に授業実践・改善を完了しており、現在分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
高校家庭科教員調査から若い教員の課題が明らかになった。次期学習指導要領の改訂に向けてアクティブ・ラーニングが課題となるが,これまで先駆的に実践事例を積み重ねてきた家庭科の学びを今後整理し,次世代の教員養成に生かす取り組みが必要と考える。そのため、これまでに発行されている授業実践を分析し、家庭科で育成する生活課題解決能力とアクティビティ(学習活動)について整理していく。 また、「生活課題解決能力を育成する授業デザインと授業改善・創造モデル」について、H27年度に実施した授業実践を分析してアクションリサーチの効果と課題を検討し、活用しやすい指標についてさらに検討していく。 そして、最終年度であるため、これまでの研究成果を調査報告書にまとめ、家庭科教員向けセミナーでの活用や著書の発行等も今後検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次期学習指導要領の改訂に向けてアクティブ・ラーニングが課題となるが,これまで先駆的に実践事例を積み重ねてきた家庭科の学びを今後整理し,次世代の教員養成に生かす取り組みが必要である。当初から、H28年度は、これまでに発行されている授業実践を分析し、家庭科で育成する生活課題解決能力とアクティビティ(学習活動)について整理していくことを予定していたが、より重点を置いて分析を進めていくことにする。そのため、これまでに発行されている授業実践集の図書購入代を多く計上する。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度の残額は、高校家庭科の授業実践について都道府県や地区単位の家庭クラブや研究会で授業実践集を出版している。授業実践集3,000円×10冊、その他、授業デザイン関連図書に当てる。 また、H27年度の予算残高ではレザープリンタのトナーが購入できなかったため、H28年の予算では、研究を分析まとめいくために必要なインクトナーや記憶媒体を計上する。
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