研究課題/領域番号 |
26350307
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
菅谷 克行 茨城大学, 人文学部, 教授 (30308217)
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研究分担者 |
関 友作 茨城大学, 教育学部, 准教授 (50282273)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子書籍 / 文章理解 / 読解方略 / 電子メディア / メディアの活用 / 表示特性 / 操作特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電子書籍端末上の文章読解行為に注目し、電子媒体の表示・操作特性を活かした読解方略や読書スタイルを、被験者実験を通じて明らかにすることである。具体的には、(1)読書方略と表示方式・操作性との関連性、(2)立体的・構造的な読書の可能性、(3)ハイパーリンク付き文章の読解行為、という3つの観点から分析・検討し、デジタル情報時代における新たな読書文化・教育の基盤の一部を構築することを目指す。 27年度の計画は、電子書籍媒体を用いた被験者実験で用いるコンテンツの制作、電子媒体上の読解方略に関する被験者実験の実施であった。 まず、実験用コンテンツの制作については、前年度に判明した問題(一部機能不全となる時があり、数秒間停止したり操作不能に陥ったりすること)を解決すべく修正版の制作・試行を繰り返したが、根本的問題解決に至ることは困難であった。そのため、被験者実験の運用面(実験手順や操作上の注意)を工夫することにより一部機能不全が実験中に発生しないよう留意することとし、コンテンツ制作は完了とした。 次に、被験者実験の実施については、上記(目的)で述べた3つの観点に加え、前年度の予備実験で明らかとなった「媒体の違いによる読書行為への没入度・集中度の違い」を分析すべく、複数の実験を計画・実施した。実験中、複数の被験者に操作上の戸惑いが確認できた。それは、電子ペーパー端末でページ送り・戻しが思うようにいかない、というものであった。現時点における電子ペーパー端末の技術的な特徴が主要因であることが判明したが、これらを取り除くことはできない。そこで、当該媒体の使用頻度を高くする(慣れる)ことにより解決できるのではないかと考え、端末を複数台入手し被験者に貸し出し、日常読書で使用することを促した。そのため実験に要する期間が当初の計画よりも長くなってしまい、年度内の全実験完了は困難となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電子書籍媒体を用いた被験者実験で用いるコンテンツの制作と、電子媒体上の読解方略に関する被験者実験を実施することが本年度の目標であった。前者については、一部機能不全となる不具合を解消することはできなかったが、技術的に深追いすることを避け、実験運用上の工夫によって不具合を回避することとし、実験用コンテンツの完成とした。 後者については、上記コンテンツの完成を受けて予定どおり被験者実験を開始することはできたが、年度内に全実験を完了するには至らなかった。主な要因は、現時点における電子ペーパー端末の技術的特徴(数ページ毎に瞬間的に白黒反転したり、ページめくり操作の反応が遅延したりすること)により、複数の被験者に操作上の戸惑いが発生したことである。LCD表示の端末はスマートフォンやタブレット端末などで使い慣れている被験者が多かったのに対し、電子ペーパー端末は使用経験のない被験者がほとんどであり、このことが今回の戸惑いを誘発している可能性があることが判った。そこで、電子ペーパー端末の使用に慣れてもらう期間を実験の準備期間に加えることにし、上記操作上の戸惑いの発生を抑えることにした。そのため、当初の実験計画よりも長期間を要することになり、年度内に全実験を完了することができなかった。しかし、本研究の分析精度を高めるためには必要な計画・進度の修正であることと捉えている。 以上より、当初計画よりもやや遅れていると判断するが、本研究全体の遂行に大きく影響を及ぼすものではないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、27年度に完了できなかった被験者実験を継続実施し、すべての実験を完了させることが最優先事項である。実験準備として電子ペーパー端末を被験者に貸し出す期間を要するため、一度に多人数の実験を並行実施することはできないが、上半期内には全実験を完了する予定である。 そして実験データの分析・考察の結果から、各種電子書籍の特性に最適化した読解方略や読書スタイルおよびそれらを支援するために備えるべき電子媒体・コンテンツの機能を整理・提案する予定である。特に、印刷媒体の特性と対比しながら、各媒体の特性に応じた使用方略や操作を明示することを通じて、デジタル情報時代の読書や学び方の一端を明らかにしたいと考えている。 また、関連学会の全国大会や研究会に複数参加し、多くの研究者と交流・意見交換をしながら考察を深め、本研究成果を論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者実験が当初よりも長期間で実施する必要性が生じたため、年度内に実験完了とならなかった。そのため、実験データの整理・補助等に関する人件費・謝金の執行を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越分は主に実験データの整理・補助者に対する人件費・謝金にあてる予定である。そのほか、消耗品等の物品購入、研究発表のための旅費などについては、当初の予定どおり計上する。
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