最終年度の研究成果 指導医の安全管理能力の評価法として、危険因子分析演習(医用HAZOP)ならびにシミュレーター実習から網羅的に抽出されたリスクのうち、指導医が想定することができた事項の割合を検討した。今回検討した静脈採血手技については、臨床実習指導の経験を持たない5名の医師の危険因子分析演習でも臨床実習を担当している大学教員と同様に全て想定がされていた。これらの結果より、指導医の安全管理能力の養成に危険因子分析演習(医用HAZOP)のそのものが有用であることが示唆された。そこで、指導医の安全管理能力の養成プログラムとして、指導医講習会において、実習計画の立案をゴールとした病棟基本手技の安全教育のグループワークを計画し、尿道カテーテルの挿入手技を対象として12名の指導医(2グループ)に試行した。グループワークは、目標および指導方略を検討する中で、危険因子分析の手法を導入した。その結果、いずれのグループも、物品準備、手技工程と、それに付随する事故につながる可能性のある行為の“ずれ”を学生に理解させることを目標に挙げ、学生が尿道カテーテルの挿入を実施する際のリスクを具体的にかつ網羅的に列挙できた。事後アンケートでは、全参加者が本グループワークの意義について肯定的評価であった。
期間全体を通じた研究成果 基本的診療技能として、静脈採血および尿道カテーテルの挿入の手技を学生が実施する際のリスクの網羅的解析ができた。その結果をもとに指導医が事前に想定できたリスクの割合で安全管理能力を評価できる可能性が示唆された。指導医の安全管理能力の養成プログラムとして、危険因子分析の手法を導入した病棟基本手技の実習計画立案のグループワークが有用であることが示唆された。
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