研究課題/領域番号 |
26350313
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松田 稔樹 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60173845)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 研究方法論 / 教育実践研究 / eポートフォリオ / 教授活動ゲーム / ゲーミングシミュレーション / 教師教育 / 見方・考え方 / 問題解決力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、教育工学的な教育実践研究の方法を定式化し、それを大学院学生や現職の教員に指導するためのeポートフォリオ・システムとして具現化することである。実践研究と単なる実践とを区別する鍵は、成果の汎用性や信頼性である。2015年度は、それを担保する理論的基盤として、問題解決の縦糸・横糸モデルを提案し,詳細化する作業を進めた。当該モデルは、教科横断的な汎用的方略、各教科の本質である見方・考え方やメタ認知、領域固有知識の3つの要素からなり、それらが問題解決過程でどのように活用されるべきか、また、どう習得したらよいかというメカニズムを表現している。モデルの汎用性と実践研究における可用性を確認するため、情報科教育、数学課題学習、理科自己学習、技術者モラル教育、教科と連携したキャリア教育など、さまざまな領域で修士論文学生の実践研究に応用させ、実際に成果を上げた。 教育実践研究に必要なもう1つの要素が、研究の方法、ツールである。本研究では、コンピュータ上で動作するゲーミング教材を開発し、教育的働きかけの透明性や学習者から取得するデータの客観性、信頼性を高めることを意図している。これを支援する鍵は,教材開発の負担を軽減することであり,2015年度は,教材開発の手法を定式化すること,その際に必要になるゲーミング教材テンプレートを整備することに主眼を置いた。教材開発プラットフォームは、eポートフォリオの開発にも使っている教授活動ゲームシステムであり、テンプレートの動作を確認しながら、教材の記述方法を学ぶこともできるという利点がある。 以上の成果に基づき、eポートフォリオ・システムの実装に着手しており、2016年度に、大学院の授業と研究室のゼミ活動の進行に応じて、実装と検証を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①模擬授業ゲームに生徒モデル記述機能と生徒の反応生成機能を追加すること、②教材設計フレームワークと教材内容とからe-learning教材をオーサリングする方法を確立すること、③模擬授業ゲームや意思決定ゲームのログを用いた評価研究方法論(ログ分析機能)を検討すること、④実践研究に必要な知識の獲得や研究方法の習得を支援するeポートフォリオ・システムを開発すること、の4つを同時並行で行うこととしている。また、これらのうち、研究代表者が主に行うのは④であり、それを研究室の指導学生に活用させながら、①~③の研究を進めることを想定している。 本研究では、教育実践研究の進め方そのものも、問題解決の縦糸・横糸モデルに基づいて行うこととしている。2014年度に、そのうちの目標設定過程の詳細設計を行い、2015年度に実装作業に着手したが、その後、代替案発想過程と合理的判断過程の設計を進めた結果、教材開発の支援(上の②)が鍵を握ることが明らかになったため、2015年度は、④への実装を念頭に置いて、②の研究に重点を置いて進めた。全般的に、実装作業が遅れているが、実装に必要となるモデル化や教材テンプレートの開発が進み、2016年度に、実装しながら運用するための基盤が整ったため、全体としては、2016年度中に目的は達成される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、既に、授業やゼミ活動と同期して、システムの実装と運用を行っている。2015年度の修士課程学生の研究進捗状況と比較しながら、システムの効果を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は、3万円弱である。国立大学法人の第二次中期計画最終年度に当たることから、年度末の出張や物品購入が制限されたため、早期に計画的に支出したもの以外に無駄な支出をすることはせず、翌年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度に入り、海外雑誌に投稿していた論文の掲載が決定したり、昨年度の国際会議で発表した論文がセレクテッドペーパーとして採択され、書籍に掲載されることになったりしたため、その掲載料や書籍購入費に充てる。
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