研究課題/領域番号 |
26350316
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中山 裕一郎 信州大学, 教育学部, 名誉教授 (80155895)
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研究分担者 |
田島 達也 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (00377615)
齊藤 忠彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10313818)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音楽教育 / 発声指導 / 音カメラ |
研究実績の概要 |
音楽教育における発声学習では,実際に出ている声を聴くことはできるが,視覚的にとらえることはできないため,そのイメージがつかみにくい。そこで本研究では,音カメラを用いて,実際に出ている声を視覚的にとらえ,学習者にとってよりわかりやすい発声トレーニングのあり方を検討している。音カメラとは,複数の音源の位置を特定し,リアルタイムに音圧レベル(dB)や周波数(Hz)を色や丸い図形の大きさで表示することができる装置である。(株)熊谷組技術研究所の協力を得て本研究を推進し,同研究所の無響室で実験を行っている。平成27年度は,「ア」「イ」といった母音に加えてハミング「ン」の特徴をとらえる実験,口笛と発声を比較する実験,長三度の響きをとらえる実験,同音の響きをとらえる実験,複数で合唱曲を歌っているときの特徴をとらえる実験などを行った。被験者は20代の女性で,いずれも音楽経験者とした。被験者の正面および上面から音カメラを用いての計測を行った。音カメラは5つのマイクロホンと1つのCCDカメラを装備しており,マイクロホンで収録した音情報を用いて音源方向を推定し,CCDカメラから得られた映像情報とパソコン上で組み合わせて表示する。被験者と音源探査装置の距離は1,200mmとした。実験時に正確に音階を発音するために,小型音源(キーボード)から小音量で再生した音階の音を聞きながら発音した。ハミング「ン」の実験では,「口閉,歯閉」「口開,歯開」「口閉,歯開」の3種類の違いや,ハミングから「マ」に移るときの声の視覚化をとらえた。その結果,ハミングのときは,声の発声部位は胸部が中心にまとまっているが,だんだんに口を開いていくと,発声部位が胸部を中心に広がっていくことを確認することができた。ハミングの練習は,よい響きを作るための基礎練習となるといわれている。音カメラで,3種類のハミングの違いを視覚的にとらえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発声の基本となる母音を中心に,音の高さや強さを変化させながら,声の発生部位を特定する実験を順調に進めることができた。また,複数で同時に声を出したときや複数でハーモニーを奏でたときに共鳴しあう瞬間を音カメラでとらえることができた。さらに,3種類のハミングの違いを視覚的にとらえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
母音やハミングによる基礎データが整いつつあるので,今後は,美しい響きの視覚的な特徴をとらえ,視覚的にわかりやすいモデルの構築を進めたいと考えている。また,そのモデルを用いることの学習効果があるかどうかを検証するために,NIRSを用いての脳血流の測定実験に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行う予定であった研究の打ち合わせが行えず,旅費として予定していた予算が未使用額となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は,平成28年度の請求額と合算し,実験時に関わる旅費,資料収集や学会参加のための旅費に当てる。
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